6割超が礼拝「自粛」を経験 4割は教会会計維持 日基教団神奈川教区宣教部委アンケート

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 日本基督教団神奈川教区宣教部委員会(事務局・溝ノ口教会)はこのほど、昨年3月から8月にかけて行った「コロナ禍における教会・伝道所の実情について」調査したアンケート結果を公表した。調査対象は同教団神奈川教区内の教会(伝道所)で、全107教会のうち83教会から回答があった(回答率77.5%)。回答者109人の内訳は教師が75人、役員(長老)が34人。

2020年4月の「緊急事態宣言」を前後して、「礼拝を自粛した期間があった」と回答した教会は約66%。自粛の際に「緊急事態宣言」を意識したと答えたのは90%に上った。自粛中の対応として最も多かったのは「週報・説教原稿の配布」で、礼拝をオンラインで配信、あるいは録画で公開した教会は合わせていずれも約20教会に留まった。自粛しなかった教会の対策としては、「換気」が最も多く16%、次いで「消毒用アルコールの設置」「司会者、説教者のマスク着用」「手洗いの徹底」「礼拝時間の短縮」などが続いた。

一方、通常会計、特別会計の昨年度8月末との比較に関する問いには、「昨年度と同じ」との回答が32教会(36%)、「通常会計が減少」は31教会(35%)、「特別会計が減少」は20教会(23%)だった。

他教会との情報交換求める声も
回答から垣間見える現場の苦悩

礼拝を自粛した理由として、「信仰者、教会にとって命にも等しい礼拝を、感染拡大防止のため、命を懸けて働いておられる医療従事者などのためにおささげするという思いで自粛に至った」との声もある中、「リスク回避の観点から中止は妥当との意見がある一方、教会は常に開かれているべきとの意見が聞かれた」「(教会員は)教会の方針をよく理解し、きわめて協力的だったが、葬儀への参列制限について初期には異論あり」との回答も見られ、緊急時における合意形成の難しさを浮き彫りにする結果となった。

調査対象期間である3月から8月のうち、オンライン礼拝の出席者数が最も多かったのは5月で延べ1231人(26教会)、毎回の平均値は4月の55人が最多だった。ただ、「動画配信での礼拝を準備しているが、機材のこと、讃美歌の著作権のことなど分からないことが多い」「一つの教会だけでは対応が難しい」という不安の声や、オンライン以外の対策についても他教会との情報交換の必要性を訴える意見が多数見受けられた。

また、献金に関する悩みも複数寄せられており、「持参、郵便振り込み、礼拝再開まで待つ、の三つの選択肢を提示して教会員に選んでもらった」「これからは自宅で(説教を聞くだけでなく)献金もできるシステムの開発が必要。教団、教区などが中心となって、どの教会も使えるシステムを作ってほしい」「教区負担金の減額を」など、教団からの支援や、信仰共同体として一定のガイドラインを求める声も聞かれた。

コロナ禍を経た意識の変化に関する問いには、「礼拝以外の集会がないと、こんなに体力的に楽なのか」という80代の教会員の感想を受け、「普段、かなりの負担を強いていたことを反省」したという牧師の声をはじめ、「不安の中にある多くの人に向けて説教を語る必要を感じた。他のつながりが切れる中、教会がつながっていることの意義を感じた。オンラインで求道者、新来会者、長期欠席の信徒がつながったので、より分かりやすく説教を語る必要を感じた」「柔軟な対応を『しなければならない』し、『してもよい』ことが身にしみて分かった。特に『教会を閉める』ということに、私自身が抵抗があった。『日本の教会は戦争下でも教会を閉めなかったということを誇りにしてきた』と(意外なことに私自身が)考えていた。去年10月の台風で礼拝を休止した時と同様、『教会が命の方を優先する』ということを『新たな誇り』とすべきだと思い至った」「教会員が信仰生活においても、社会生活においても、孤立しないよう今まで以上に配慮していくことが牧会的対応として求められている。……そのことは礼拝、教会形成、伝道、宣教などに変化を与えるだろうし、教会員一人ひとりの信仰にも影響を与えていくだろう。現在はまだその過渡期にある」などの回答があった。

また、実際に教会が経験した変化としては「本当に大切にしなくてはいけないものを考えるようになった」「礼拝時間が短くなり(30分)、元に戻った時礼拝が長いと思われるのでは……」「教会学校を休会しているが、10時半から主日礼拝を(大人の礼拝と)合同にしている。世代を問わず、一つに集うことのできる新しい恵みを味わっている」「どうやって礼拝するかばかり考えて、内向きになりつつある。地域とのつながりが薄くなってしまっている」「教会を書面議決にしたことは、やむを得なくないとしつつ、それに至る手続きが十分ではなかったのでは、という意見があり、礼拝後安心して集える時が来たら、そのことや議決内容について話し合う場を設定することが決まっている」「これまで教会行事、家庭集会、祈祷会などを聖書の学びや交流の場としてきたが、地区ごとに主日礼拝を固定していることもあり、日常的な教会員同士の交流が十分でない状況が続いている。……直接会うことができないけれども、教会員同士が互いに思いやる状況は生まれている」などの回答があり、それぞれの状況に応じて新しい形を模索する現場の苦悩が垣間見られた。

また、この危機を前向きに捉え、「教団、教区、教区の会議もこれを機に簡素化すべき。費用、時間を考慮しオンラインの可能性を探る。コロナの件に対応する働き方が求められている。ステイホームが強いられる中、牧師のあり方、働き方を見直すにはよい機会である。教会形成のために時間と労力を裂いている教会の集まりが『教区』であるという認識が必要」「海外の教会では、(コロナ禍など)大きな事件の後にはウェブサイトに声明文が出され、必ず祈りの言葉が載せられている。牧師はこれを各教会の教会員に流したりすると、大きな悲しみ、苦難にも、どう対応すればよいのかが信仰者としての姿勢が示されるので、助かる。インターネットの時代に、このような利用の仕方がされると良い」などとする具体的な問題提起も多数示された。

調査結果に関するより詳しい情報は、日本基督教団溝ノ口教会・飯田輝明(Tel 044-866-8031)まで。

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