さて、前回はクリスマスソングと讃美歌と聖歌とゴスペルのちがいについて説明いたしましたが、今回は讃美歌そのものの歴史やエピソードをご紹介したいと思います。これを読めばまた一つか二つ豆知識が増えて、「クリスマス博士」に近づけることうけあいです。
讃美歌の歴史
世界で初めて讃美歌が歌われたのは、旧約聖書の名シーンの一つ、映画「十戒」でのクライマックスとも言える、モーセが海を割ってエジプト軍から逃げたあのシーンの後で「よかった助かった!神様ありがとう!」と、みんなで歌ったときだとされています。その「海パッカーン事件」が起きたのは紀元前16世紀(諸説あり)とされていますから、その日から今日まで、教会音楽には約3500年もの歴史があるということです。
その頃からイエス様の生きた頃までは「みんなで歌うスタイル」が定番だったのですが、それだとやがて地方や年代などによって、みんなが歌う歌がバラバラになってきて、「これではよくない!」ということで、4世紀頃に教会は「みんなで歌うの禁止!」と決めました。この頃から讃美歌は「教会の聖歌隊だけが歌うもの」になったんです。そのルールは1000年以上続いたのですが、宗教改革をしたルターさんが「やっぱりみんなで歌おうぜ!」と言い出し、それでプロテスタントからまた「みんなで歌うスタイル」が復活したんです。
ところで讃美歌というと「昔の歌」というイメージを持っている方も多いと思いますが、実は今でも次々と新しい曲が作られ続けているんです。しかもその曲調はロックだったりポップスだったりと様々です。そういった「新しい讃美歌」は「コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック」と呼ばれ、アメリカのCDショップなどでは売り場の一角をそのジャンルが占めるほどに普及していますし、それ専門のラジオ局があったりもします。日本ではそういった音楽をを取り入れる教会もあれば、伝統的な歌しか歌わない教会もありますが、教会によって歌う曲もずいぶん違うのだということは覚えておくと、教会を訪れたときにびっくりとかがっかりとかせずに済むかもしれません。
クリスマス定番曲の裏エピソード
さて、クリスマス曲の定番といえば「きよしこの夜」ですが、この曲が作られた背景にはこんなエピソードがあります。1818年のクリスマスに、オーストリアのある教会でオルガンによる演奏をする予定だったのですが、その演奏の前日になって急にそのオルガンが壊れて、音が出なくなってしまいました。「これはこまった!これではクリスマス礼拝ができない!」ということで、急遽(きゅうきょ)、フランツ・グルーバーという作曲家が呼ばれ、「オルガンが壊れたから、ギターだけで演奏できる讃美歌を明日までに作って!!」という無茶ぶりによって、一夜にして出来上がったのが、この「きよしこの夜」なんだそうです。
教会ではうまく歌えなくてもいいんです!
さて、ここまで讃美歌について解説してきましたが、実際にそれを体感するにはYouTubeやCDで聴くよりも、やっぱり教会に行って生で聴くのが一番です。聖歌隊のいる教会に行ってプロ並みの美しいコーラスを聴くのもいいでしょうし、「みんなで歌うスタイル」の教会に言って一緒に歌ってみるのもいいです。クリスマスの時期にはクリスマスの歌を歌うことが多いので、教会に今まで行ったことのない方でも「あ、この曲は知ってる!」となる可能性が高いです。「歌が苦手なので歌うのはちょっと・・・」という方でも気にすることはありません。讃美歌は上手に歌う必要なんてないんです。音を外したからと言って「そこ!音程がずれてる!!」なんて怒る人はいませんし、神様は美しいハーモニーよりも、自分に歌声が向けられていること自体を喜ぶ方ですから。それに、もし恥ずかしかったら歌わなくても「そこ!ちゃんと歌いなさい!」なんて怒られることもありませんからね。気楽に讃美歌体験、しちゃってみてください。
それではみなさま、よいクリスマスをお迎えください。またいずれ。MAROでした。