あなたがたには世で苦難がある。しかし、勇気を出しなさい。わたしは既に世に勝っている。(ヨハネによる福音書16章33節)
人の子として生きた主イエスは、人々の嘲(あざけ)り、悲しみ、貧しさ、孤独という苦難を経験した。主はこの世の苦難の背後に、人間の罪と、人間を罪に駆り立てる悪魔を見ておられた。今日、人間は高度な文明社会を築き、生活の様々な不便を克服した。しかし、この世には今なお、人を非人間的な行動に駆り立てる悪魔的な力が跳梁(ちょうりょう)し、闇が覆っている。
「わたしは既に世に勝っている」と主イエスは言った。主イエスは不条理な人間の罪によって殺されたが、神によって復活し、罪に勝利された。この方こそ人をして世の罪に勝たせる救い主である。罪と死に勝利した主イエスが私たちのところに来て、「勇気を出しなさい」と語りかけられる。
主イエスは、十字架の死と復活によって私たちを罪の支配から解放し、神の支配に招き入れる。そして、私たちを神の民として世に遣わす。「全世界に行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えなさい」(マルコ16・15)。
私たちが遣わされて行く世は、罪によって引き起されるさまざまな問題に満ちている。私たち自身も自分の罪に泣かされる。しかし、私たちは落胆しない。私たちの体にはなお罪が染みついていても、私たちはすでに主によって罪を贖(あがな)われた者である。神の国が成就される終わりの日に、主は私たちの罪の体を完全に贖い清めてくださるであろう。私たちは神の国の成就を待ち望みながら、罪と戦う。私たちは弱いが、主が共におられる。主の言葉を聞き、主に祈ることができる。主はいつも言葉と霊によって、私たちに生きる勇気を与えてくださる。