主の祈りのとおり生きる
2016年7月24日 年間第17主日
(典礼歴C年に合わせ3年前の説教の再録)
祈る時にはこう言いなさい
ルカ11:1~13
イエスさまが祈っていました。それが終わるのを弟子たちは近くで待っていたのかもしれません。そして祈りが終わると、弟子のひとりが頼んだのです。「主よ、ヨハネが弟子たちに教えたように、わたしたちにも祈りを教えてください」(ルカ11:1)
イエスさまが祈っておられる様子を見て、「自分もああいうふうに祈れたらいいな」と思ったのかもしれません。イエスさまの祈りの姿には、「自分もあんなふうに祈りたいな」と思わせる「一致」があったのだと思います。父である神さまとの深い一致があって、「あんなふうに祈れたらいいな」と思ったのかもしれません。
聖アウグスティヌスが『告白』という本を書いていて、最初のほうにこういうことを言っています。「主よ、あなたは私たちをあなたに向けておつくりになりました。それゆえ私たちは、あなたのうちに憩うまで、決して安らぐことがないのです」。私たちの究極の憧れと望みは神さまだと言っていいと思います。
さて、そう言われたイエスさまは、「祈るときには、こう言いなさい」と言って教えられました。
父よ、
御名が崇(あが)められますように。御国が来ますように。
わたしたちに必要な糧(かて)を毎日与えてください。
わたしたちの罪を赦(ゆる)してください、
わたしたちも自分に負い目のある人を
皆赦しますから。
わたしたちを誘惑に遭わせないでください。(2~4節)
中身はよく分からなくてもいいから、そう祈り続けなさい。そういう意味で教えたのだと思うのですよ。
というのは、この祈りの中身を、私たちだけでは完全に生きることができないからです。しかし、イエスさまはこのことを完全に生きておられました。
イエスさまは神さまを「父よ」と呼ぶことができたのです。私たちにはできないことですが。
「御名が崇められますように」とはどういうことでしょうか。神さまは、ひとりの例外もなく「わが子よ」と言って愛して、私たちと一緒にいてくださいます。その父の「御名を崇める」とは、「あなたは神さまに愛された子ども」と認めて生きることです。それが「御名が崇められますように」という祈りの中身だと思います。イエスさまはそのことをなさっていました。
「御国が来ますように」。イエスさまは、御国という神さまの支配を受けて、神さまがご自分にも、あなたにも一緒にいてくださるという真実を完全に生きておられます。
「必要な糧を毎日与えてください」。イエスさまは必要な糧を完全に受けておられます。パンだけでなく神の言葉によって生きるという真実を、イエスさまは生きておられます。
「罪を赦してください」。イエスさまは罪という的外れがありませんでした。
「わたしたちも自分に負い目のある人を皆赦します」。イエスさまは赦しておられます。
「誘惑に遭わせないでください」。試練に遭うことがあっても、誘惑に陥ってしまうことのないお方でした。
私たちは「このように祈れ」と言われても、このとおりにはできないのです。でも、「そう言いなさい」と言われているので、いつもこの祈りを祈っています。いつも、いつも。そして、今日のイエスさまの教えは、何があってもしつこく求め、叩(たた)いてでも、この祈りを祈り続けるようにという教えです。
「良いものを与えてくださる天の父は、求める者に聖霊を与えてくださる」と、今日の福音は結んでいます(13節参照)。聖霊とは、イエスさまの霊のことです。求める者にイエス・キリストの霊といのちを与えてくださるのです。
「主の祈り」の中身を「そのとおりにしなさい」と言われても、私たちはそのとおりにはできません。でも、そのとおりに生きておられるイエスさまの霊を私たちはいただくので、「その霊に結ばれて私たちもそうすることができる」というのが、今日の福音の中身です。
いつも、いつも執拗(しつよう)に、恥知らずなくらいに求め続けるようにイエスさまは教えておられます。天の父は聖霊を与えてくださいます。聖霊とはイエスさまのいのちです。私たちはイエスさまと一緒の体になって、一緒の向きで生きる者となります。
イエスさまの体を「ほしい」と求めちゃいけないのかな。イエスさまが人を愛した体で、私も人を愛したいと求めてはいけないのかな。イエスさまが人を愛した心で、私も人を愛したいと求めてはいけないのかな。イエスさまが人を愛した魂で、私も人を愛したいと求めてはいけないのかな。
いいのだと思います。イエスさまはそのためにご自分の体を私たちに食べさせてくださるのです。
願い続け、求め続けて、イエスさまのように自由に人を愛し、人のために生きるいのちになれたらいいなあと、心から思います。そう願って、しつこく祈り続けて、イエスさまと一緒に歩む歩みになりますように。ご一緒にお祈りをしましょう。