画像生成AI活用に向けた韓国教会の挑戦」 李 恵源 【この世界の片隅から】

2023年11月18日にソウルYMCAにおいて、「韓国キリストAI作家協会」(Korean Christian AI Association=KCA)の発足式および創立礼拝が開催された。KCAは、「文化宣教の道具として、人工知能の価値を再発見し、キリスト教文化の発展」に寄与するという趣旨のもと、キリスト者の作家らが集結して設立された団体である。

発足以降KCAは、「自分だけの聖書童話づくり」「聖書グッズ制作」などの4週間短期課程のほか、「バイブル・ジャーニー・クリエイター課程」という12週間の正規課程を開講し、AI画像生成の方法やMidjourney(画像生成AI)の使用法などに関する教育を推進している。また2024年3月には、AIアート特別展示会やAIアートグッズ展といった展示会を次々に開催し、大衆向けにAI美術を紹介する活動を積極的に展開している。

一方、オープンAIが画像生成AIであるDALLE-Eを公開して以降、韓国では無料AIを利用して教会のカレンダーや教会学校の教材づくりなどを試みるためのノウハウを紹介する文章がインターネット上で増え始めている。特に2023年9月にDALLE-E3が公開されて以降、より完成度の高い絵を描くことが可能となる中、財政的に厳しい教会が低予算で多様なポスターや教材を制作することのできる道が開けたのではないかと思われる。

筆者も、「AIで絵を描くには、コンピューターに命令形の言葉だけを打ち込めばいいだけなので簡単では?」と思いつつ、画像生成AIを用いて絵を描くことを試みてみた。DALLE-E3は、有料であるChatGPT4に含まれているが、マイクロソフト社のCopilotがChatGPT4を搭載しているので、Copilotの「無料体験」を選択すれば、無料でDALLE-E3も利用することができる。DALLE-E3を利用したところ、絵を描けば描くほど挫折感を味わうこととなった。なぜ一般人ではなく、専門家たちがAI画像に関する協会を立ち上げたのかが理解できた気がする。描こうとする絵の構図や人物の姿勢、背景、技法、スタイルなど、かなり細部にいたるまで一つひとつ詳しく指示しないと、奇妙な絵が生成されてしまうのである。どれほど詳しく説明しても、イエス・キリストが生まれた馬小屋に照明機器が描かれたり=画像上、善きサマリア人の横に自動車や余計な人物が描かれたりする=画像下=など、指示していない内容をAIが「自ら考えて」描いてしまうので、コントロールが難しいと感じた。

しかし一方で、AIに描かせた画像は2枚とも、筆者が考えたイメージとは少し異なるものとなったが、まったく絵の描き方を知らない筆者のような者も、ひょっとすると教会学校のメッセージ用の資料を自ら制作しうる日がすぐにやってくるのではないかとも思わされた。

もちろん、AIが提示する画像自体は数多くある既存の絵や画像の組み替えであり、画像の著作権の問題や芸術作品として認定されうるのかといった問題、そして、他の画家の作品の無意識的な剽窃の可能性など論議しなければならない問題が山積していることもまた事実である。しかしながら、ChatGPTのような生成AIは、すでに私たちの生活の中に入ってきており、教会の牧会や信仰生活にもさまざまな形で徐々に影響を及ぼしていくであろうというのが、人工知能関連の研究者たちの意見である。

すでにAI時代は始まっている。この先どのようにそれを創造的かつ倫理的に使用していくかに、より関心を傾けていかなければならない時期に来ているのではなかろうか。

李 恵源
 い・へうぉん 延世大学研究教授。延世大学神学科卒業、香港中文大学大学院修士課程、延世大学大学院および復旦大学大学院博士課程修了。博士(神学、歴史学)。著書に『義和団と韓国キリスト教』(大韓基督教書会)。大阪在住。

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