日本聖公会(武藤謙一首座主教)は2月8日、13番目となる主教会教書「あらゆるセクシュアリティの方々の尊厳、いのちが守られるために」を発表した。
2022年のランべス会議後、ブラジル聖公会では、この問題は各教区へ決断を委ねられ、サンパウロ教区はセクシュアリティにおける平等を受け入れており、教区内には同性愛者の聖職者も存在するものの、他の教区では離脱した教会もある。
日本聖公会は2023年以来、宣教協議会の「いのちの現場から聴く」プログラム、セクシュアリティについての主教会としての学び、意見交換を重ねてきた。今回の背景として、「改めて現時点での日本聖公会主教会としての見解を表明する重要性に鑑み、主教会がセクシュアリティのすべてのことについては同じ見解を持ち得ていないという現実を認めつつ」、メッセージを届けるに至った旨を説明している。
主教会教書は「あらゆるセクシュアリティの方々が神の似姿にかたどられ、祝福を受けた、平等でかけがえのない存在であると確信し」「日本聖公会のメンバーである方が、そのセクシュアリティによって差別されたり信仰共同体から排除されたりすることや、尊厳を脅かす一切の言動について憂慮し、それらを不適切であると考え」「神が造られたいのちは多様性を包含し、すべてのいのちは神からの恵みとして与えられているものである」と宣言。
その上で、同性カップルの祝福や同性婚については、「大事な課題としてこれからも学びを深め、取り組んでまいります」との言及に留めた。
主教会教書の全文は以下の通り。
日本聖公会主教会教書「あらゆるセクシュアリティ*の方々の尊厳、いのちが守られるために」
日本聖公会の親愛なる皆さまに主の平和のご挨拶を申し上げます。
かねてよりアングリカン・コミュニオンにおいて大きな課題となっているセクシュアリティに関する意見や立場の相違の故に生じている分断について、わたしたち日本聖公会主教会は心を痛め、また自分たちの信仰共同体内でのこととして受け止めてまいりました。
これまでもウインザー・レポート(2004年10月)への日本聖公会主教会としての応答の中で、「同性愛者の聖職按手を控えるように決議した、同じランベス会議は、コミュニオンの主教達が、実際に同性愛者の声を聴くことを促している」ことの重要さを理解し、実施することを望み、また「日本聖公会は、聖書の権威を信じるとともに、聖書のテキストそのものが、ある時代的信仰的コンテキストから生まれたものである」、と表明しています(2005年2月)。
ここ数年のこととしては、2022年開催のランベス会議、ことに「人間の尊厳」に関するランベス・コールの協議や採択に至るプロセスを経験し、2023年日本聖公会宣教協議会の「いのちの現場から聴く」プログラムを通して、またセクシュアリティについて主教会としても学び、さらに意見交換の時を重ねてまいりました。またセーフチャーチ・ガイドラインからの提言も併せ、改めて現時点での日本聖公会主教会としての見解を表明する重要性に鑑み、主教会がセクシュアリティのすべてのことについては同じ見解を持ち得ていないという現実を認めつつ、このメッセージを日本聖公会の皆さまにお届けします。
わたしたち日本聖公会主教会は、あらゆるセクシュアリティの方々が神の似姿にかたどられ、祝福を受けた、平等でかけがえのない存在であると確信します。また日本聖公会のメンバーである方が、そのセクシュアリティによって差別されたり信仰共同体から排除されたりすることや、尊厳を脅かす一切の言動について憂慮し、それらを不適切であると考えます。
神の子として召されたわたしたちが信仰生活を歩む時、神がすべての人にその愛と配慮を向けていることを模範とし、神が造られたいのちは多様性を包含し、すべてのいのちは神からの恵みとして与えられているものであることを共有したいと願っております。
日本聖公会主教会は同性のカップルの祝福や同性婚について、大事な課題としてこれからも学びを深め、取り組んでまいります。
日本聖公会の営みや決断が神のみ旨にかなうものでありますように、聖霊の導きを一層ともに祈り求めてまいりましょう。
2024年2月8日
日本聖公会主教会
*セクシュアリティとは
性にまつわる総合的な概念で、人格的な要素や他者との関係性を含んでいます。性自認、性表現、性的指向、恋愛指向、体の性などのことを言います。