Q.洗礼名とは何ですか? 仏教でいう戒名のようなものと考えてよろしいでしょうか?(40代・女性)
カトリック教会や東方正教会、聖公会などでは、受洗の時、洗礼名を付ける習慣があります。またカトリック教会では、堅信の時、さらに堅信名をいただきます。受洗を前に、どんな名前を選ぶか、聖人伝を読みながら考えるのも楽しいものです。
戒名というと、故人に送られる名であると誤解されがちです。法名・法号などを含むいわゆる戒名は、初めて戒律を受け、仏門に入る時に師匠から受ける名であり、同時に俗名を捨てる習わしでした。講習や修行を終えた信徒に戒名を授ける宗派もあるようです。
カトリック教会などでは、洗礼を受けて神の子とされる時、先輩の聖人にあやかり、その聖人のようにイエスに従いたいとの願いを込めて、その名を洗礼名に選びます。ですから、この習慣は、聖人に対する考え方と深い関係にあります。
カトリック教会などの信仰箇条には、諸聖徒の交わりというものがあります。地上の教会と天上の教会には交わりがあるというのです。地上の教会とは、今この世界に生きる者の教会です。天上の教会とは、すでに主からみもとに召された人々の集まりです。教会から聖人とされていなくても、救われて主のみもとにいる人々は、みな聖人です。そして地上にあっても天上にあっても、主の教会は一つです。主にあって一つに結ばれた者は、生死を超えて互いに祈り合うのです。そして母である教会によって、その聖性が認められた聖人に対し、わたしのために祈ってほしいと願う。その聖性に与りたいと望む。そのようなこころで、洗礼名を付けるのです。
また個人の洗礼名同様、教会にも聖人の名前が付けられています。聖マリア教会とか、聖ヨセフ教会などです。その教会が、特に保護を願いたい聖人の名前を取ります。日本では、信者同士呼び合う時、洗礼名はあまり使われませんが、教会の名前も、普段は、より分かりやすいように麹町教会、築地教会のように、教会堂が建っている地名を使うことが多いようです。
*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。
ひらばやし・ふゆき 1951年フランス、パリ生まれ。イエズス会司祭。上智大学大学院神学研究科博士前期課程、教皇庁立グレゴリアーナ大学大学院教義神学専攻博士後期課程修了。教皇庁諸宗教対話評議会東アジア担当、(宗)カトリック中央協議会秘書室広報部長、 研究企画部長などを経て、日本カトリック司教協議会列聖推進委員会秘書、上智大学神学部非常勤講師。