「宗教者の過半数が合法的な中絶を支持」米調査

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アメリカ国民の3分の2近くが合法的な中絶を支持しており、その見解は、連邦最高裁が中絶の連邦政府の権利を覆し、医療処置の管理を各州に委ねて以来、数カ月を経てもあまり変化していない。「レリジョン・ニュース・サービス」が報じた。

宗教を信じるアメリカ人の過半数が合法的な中絶を支持している。例外は、白人の福音派(ビリーグラハムの流れをくむ米国福音同盟、米国最大教派南部バプテスト連盟を抱えるトランプ支持団体と言われる)、エホバの証人、末日聖徒(モルモン教)、ヒスパニック系のプロテスタントである。

2022年3月から12月にかけて実施された、約2万3000人のアメリカ人を対象とした新しい調査結果の一部だ。最高裁は6月、中絶の憲法上の権利を覆す「ドブス対ジャクソン女性健康機構」の判決を発表した。

この調査では、連邦政府による中絶禁止令に圧倒的な反対があることも判明している(リンジー・グラハム上院議員は9月に15週齢――妊娠4カ月――の中絶禁止を提案した)。中絶を禁止する国内法を議会で可決すべきと答えたアメリカ人はわずか12%だった。実際、53%のアメリカ人が、議会は中絶の権利を保護する国内法を可決すべきだと答えている。

調査をしたPRRIのCEOメリッサ・デックマン氏は、「中絶を禁止することへの支持は、ほとんどのアメリカ人にまったく浸透していない。中絶禁止を掲げる共和党員でさえも」と述べている。中絶をほぼ全面的に禁止しようとする州は、ほとんどの住民の見解に相反していると加えた。

白人の福音主義者(ペンテコステ派、バプテスト派、ホーリネス他)では、連邦政府による中絶禁止に賛成する人は23%に過ぎず、52%は、中絶法は州の決定に委ねるべきだとしている。

ドブス判決以降、13の州で中絶の全面禁止が実施され、その中には母親の生命が危険な場合やレイプや近親相姦の場合は例外として認められるものもあり、ジョージア州では6週間(妊娠1カ月間の堕胎)の禁止が実施されていると「ニューヨーク・タイムズ」紙は伝えている。他の多くの州では、中絶をめぐる法廷闘争が起こっている。

中絶に対する考え方は「ロー対ウェイド」ケースを覆す判決以来、大きくは変化していないが、過去10年間、中絶を合法に保つことに賛成する動きがより緩やかになっている。現在、アメリカ人の64%が、中絶はほとんどの場合、あるいはすべての場合において合法であるべきだと答えており、2010年の55%から上昇している。

このような緩やかな変化は、同性婚に対する支持率がこの10年間で劇的に上昇したのとは対照的である。「中絶の権利に関して、アメリカ人の間でわずかな上昇が見られるが、一般的に言って、アメリカ人が同性婚を受け入れたのと同じようなスピードではない」とデックマン氏は言う。

二つの宗教団体では、この1年間で合法的な中絶を支持する態度にシフトした。ヒスパニック系カトリック教徒では、すべてのケース、あるいはほとんどのケースで合法的な中絶を支持する人が、すべてのケースで中絶を支持するその団体(PPPI)の間での著しい上昇気運に牽引され、最高裁判決前である3月の57%から12月には62%に増加した。同様に、黒人プロテスタントでは、すべてのケース、あるいはほとんどのケースで合法的な中絶を支持する人が、3月の73%から12月には75%に増加し、これもすべてのケースで中絶を支持する人が大幅に増加した結果である(調査は2020年3月、6月、8月、12月に実施された)。

予想通り、この調査では、中絶は政治的には非常に分極化したものであり、二大政党の間で偏った見解があることが分かった。共和党の63%が「ほとんどの場合、またはすべてのケースで違法とすべきだ」と回答しているのに対し、民主党の86%が「すべての場合、またはほとんどのケースで合法とすべきだ」と反対の意見を述べている。

しかし、共和党員の間では、すべてのケースで中絶を違法とすべきとの考えは減少している。2021年9月、共和党員の22%が「すべてのケースで中絶を違法とすべき」と答えたのに対し、ドブズ判決後の2022年12月には、同じように答えたのは14%にとなっている。

中絶の合法化に対する支持は無党派層で強い――30%が「ほとんどのケース、またはすべてのケースに違法化すべき」と答えたのに対し、68%が「ほとんどの場合、またはすべてのケースに中絶を合法化すべき」と答えている。

自身の宗教的信念が中絶に対する見解を左右すると答えたアメリカ人は3分の1に過ぎず、ほとんどのキリスト教徒が同じことを答えているが、一つの大きな例外がある。白人の福音主義キリスト教徒では、73%が自分の宗教的信念が中絶の見解を決定すると答えている。

中絶の権利を支持する宗教団体の中で、アメリカのユダヤ人の38%が、中絶について自分と同じ考えを持つ候補者にしか投票しないと答えており、他のどの宗教団体よりも多い。

中絶の権利に対する支持は、ユニテリアン・ユニバーサリストとどの宗教にも属さないアメリカ人の間で最も高く、次いでユダヤ人、仏教徒、黒人プロテスタント、ヒンズー教徒、白人メインラインプロテスタント(合同メソジスト教会、アメリカ福音ルター派教会、長老派教会、米国聖公会、米国バプテスト同盟、キリスト連合教会、ディサイプルズ・オブ・クライスト)、イスラム教徒、カトリックの順であることが調査により判明した。

ほとんどの場合、あるいはすべての場合において中絶を違法とすべきとする宗教団体の中で、白人の福音派プロテスタント(34%)は、中絶に関する意見を共有する候補者にしか投票しないと答える傾向が最も高い。

(翻訳協力=中山信之)

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