共和党はカトリック司教たちにとって、中絶を終わらせること以外、ほとんど何も提供していない。司教団はすでに目標を達成したのだから、次の段階に進むべき時だ。「レリジョン・ニュース・サービス」が報じた。
アメリカのカトリック司教団は伝統的に特定の候補者や政党を支持しないが、多くの司教が共和党を好むことは誰の目にも明らかとされてきた。共和党が中絶を制限すると公約するのに対し、民主党は女性が中絶しやすいようにするからである。多くの司教にとって、中絶は最も重要な問題である。中絶は生死に関わる問題であり、命なくして他のいかなる人権も享受できない。
リークされた最高裁判決の草案によると、何十年にもわたる公約の後、共和党が指名した連邦最高裁の判事たちは、ついに中絶の権利を撤廃する態勢に入ったようだ。「ロー対ウェイド裁判」は、中絶の憲法上の権利を確立した裁判であるが、もう限界のようだ。数週間のうちに消えてしまうかもしれない。
カトリックの司教たちは何十年も働きかけてきたこの「勝利」を祝うだろうが、皮肉なことに、この勝利は司教たちと共和党の分裂につながるはずだ。共和党は他に何も提供するものがない。実際、中絶を除けば、その提案はカトリックの志向する社会教説とは正反対である。司教たちはこの提携で自分たちの望むものを手に入れた。次に進むべき時だ。
確かに、宗教の自由の問題では共和党も優れているが、ここでも司教たちは自分たちの望むものを手に入れた。ボストン旗事件(Shurtleff v. Boston)に対する最高裁の全会一致の判決は、裁判所が宗教的見解に対する政府組織の合理的配慮を要求することを示している。
さらに重要なことは、フィラデルフィアのカトリック系養子縁組機関が養父母として同性カップルを断ることを裁判所が認めたことで、カトリック系機関は司教たちの求める条件を自由に課すことができるようになることだ。
今後、中絶や信教の自由をめぐる国家間の対立は起こるだろうが、今回の「勝利」に比べれば些細なことだろう。司教団はこの掃討作戦の間、共和党に張り付きたいのか、それとも民主党と協力して他の優先事項をこなしたいのか?
司教団は国家レベルでは「勝利」を収めたが、戦いの場は今や州に移っていると言える。司教団は共和党との連携を継続し、全米のすべての州で中絶を非合法化したいのだろうか。これは各州の司教たち次第である。国家レベルでは、すでに戦いは終わっている。
議会が次のステップに進み、全国的に中絶を非合法化することを望む人もいるかもしれない。共和党は中間選挙後に両院で勝利すれば、それを実現しようとするかもしれないが、上院では民主党の議事妨害という高いハードルに直面することになる。また、共和党が議事妨害を放棄して法案を通したとしても、ジョー・バイデン大統領による拒否権に直面することになる。
また、仮に共和党が上下両院、および大統領選を制したとしても、政治の潮目が変わり、民主党が政権を奪還すれば、どんな法案もいずれは廃止されることになる。
カトリック司教団は選択を迫られている。共和党との連携を維持し、中絶をめぐる塹壕戦を続けるのか、それとも勝利を宣言して前に進むのか。
彼らはヨーロッパの同胞に指導を仰ぐかもしれない。ヨーロッパでは、中絶は立法過程や国民投票によって合法化された。それは裁判所によって行われたわけではない。民主的なプロセスで限定的な中絶が合法化された時、司教たちは「敗北」を認めたのだ。ヨーロッパでは、中絶に関する現状に異議を唱えることはほとんどない。アメリカの司教団は、民主党支持者の多い州で同じような戦略をとることができるだろう。
予想される最高裁の判決が下れば、司教たちは中絶に関する「勝利」を宣言し、医療、デイケア、教育、雇用、女性が子どもを産み育てるのを助け、中絶を強いられないようにする子ども税額控除などの社会プログラムに焦点を当てることができる。
あるいは、司教団は中絶をめぐる終わりのない戦争を続けることもできる。私の推測では、アメリカにおいて中絶に関するコンセンサスが得られない限り、彼らは戦い続けるだろう。妥協点に関するコンセンサスはいつか得られるかもしれないが、それは州内での塹壕戦が何年も続いた後かもしれない。これは、共和党に固執し、他のすべての優先事項を犠牲にすることを意味する。
これは賢明な選択なのだろうか?
(翻訳協力=中山信之)