『サンゴ・レクイエムHOPE SPOTに寄せる想い――第2回島しづ子作品展』を3月17日から21日まで那覇市の「ゆかるひ」で行いました。
2021年7月末から、辺野古新基地建設現場で始まったサンゴ移植を見続けました。ところが生息場所から切り取られたサンゴは、移植先で無残な姿になっていました。海の中ではわずかな面積でしかないサンゴ礁は、海の生物のうちの約4分の1を育んでいます。そこには数え切れない生き物が互いに関わり合って生きているばかりでなく、サンゴの中に住む褐虫藻が酸素を送り出してくれて、地球温暖化をとどめてくれているのです。
初めてシュノーケルで海の中をのぞいてみた時、竜宮城が本当にあると思えるほど、世界観が変わりました。私が覗いたのは針の孔のような狭さです。それでも、そこには見たこともない華麗な、また過酷な世界がありました。シュノーケルを始めた時、カヌーのM先輩が「今度は海の中を描くの?」と言いました。「まさか、描けませんよ!」と答えました。M先輩は、サンゴ移植が始まった直後から移植現場にもぐり、サンゴの様子を観察し、私たちに報告してくれていました。私が操船を習い始めたころは、適切なアドバイスもしてくれました。ところが、昨年秋にMさんは旅先で亡くなりました。彼は高江のヘリパッド建設現場でも、辺野古でも、重要な役目を黙々と果たしていました。新基地建設抗議行動の歴史は、多くの先輩を見送った歴史でもあります。
サンゴが殺され、そこに棲む生物が殺されていく、海の仲間たちも天に還っていく。そこで鎮魂をテーマにした作品展にしました。サンゴを描くに限らず、未熟な絵で「ヘタウマ」と評してくれた友だちの言葉に納得しています。それでもこの自然を侵さないで、大事にしてほしい、いのちをつないでほしいと祈りながら描きました。
作品展では、カヌー仲間の鈴木公子さんが「移植は珊瑚の保護になっているのか――移植現場からの報告」と題して講演。「サンゴと共に生きる私たち」と題して、中原貴久子船長も講演してくれました。「サンゴ・レクイエム」と題した作品は、サンゴの世界を下方に描き、その上を無数のカヌーが海の道を登っていきます。途中で虹に出会います。行く先には十字架が見えます。作品展を通してサンゴに関心を持つ人が増えたことが嬉しいことでした。
ウクライナ攻撃が1日も早く止むことを願いつつ祈ります。
「王の勝利は兵の数によらず/勇士を救うのも力の強さではない」(詩編33編16節=新共同訳)
しま・しづこ 1948年長野県生まれ。農村伝道神学校卒業。2009年度愛知県弁護士会人権賞受賞。日本基督教団うふざと伝道所牧師。著書に『あたたかいまなざし――イエスに出会った女性達』『イエスのまなざし――福音は地の果てまで』『尊敬のまなざし』(いずれも燦葉出版社)。