Q.教会で「婚前交渉」は罪と教えられましたが、今どき古くないですか。(10代・女性)
確かに「婚前交渉が罪だ」と何の説明もなく頭ごなしに断言されたのならば、「今どき古い」と反発したくなるあなたの気持ちもわかるように思います。現代では妊娠の仕組みも知られていますし、避妊のための手だてもいろいろとあります。女性の処女性が理不尽に重視されることも少なくなりました。
でも、性的関係を持つことのハードルが低くなりつつある「今どき」だからこそ、よく考えなくてはならないこともあるように思うのです。最も素晴らしい祝福であるはずのパートナーとの交わりを通して、わたしたちが互いの心身を悲惨に傷つけ合わないために、取り組むべき「今どきの課題」とも感じます。
「婚前」という言葉は、すべての人がいつか結婚するということを前提にしているように思いますが、最近では生き方も多様化しており、あえて結婚しない場合もあります。
そうしたこと踏まえると、今どきは「婚前」かどうかよりも、「交渉」にポイントをおいて、どこに神さまを忘れ、大切な隣人や自分自身の命をないがしろにする危険があるのかを、真剣に考えなくてはならない時代なのでしょう。
望ましくない性関係を聖書は「姦淫」という言葉で表します。「姦淫してはならない」とは十戒の中にもあり、わたしたちが神と隣人との幸せな関係を保つための大切な基本の一つといってよいことです。これについてイエス様は、実際にその行為をしたかどうかだけではなく、その心のありようまでも問題にしています(マタイによる福音書5章7節)。
ここから示されることは何でしょうか。行為の有無以前の問題として、恋愛や性愛を本当の愛とごっちゃにして、自分の感情のまま突っ走っていないか。本当に相手の心身はもちろん、自分の心身も大切にできているかなど、冷静に見つめることが大切です。
望まない妊娠や思いがけない出来事に傷つくのは、いつも女性や弱い立場のものです。慎重さ、誠実さが、昔も今も求められているのではないでしょうか。
*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。
やました・ともこ 福島県生まれ。同志社大学大学院神学研究科博士課程(前期)修了