人事異動により京都から金沢に赴任することになった。今回は、私が金沢で出会った朝鮮について記してみたい。
赴任した金沢聖ヨハネ教会に連なる逝去者は、金沢市の管理する卯辰山と野田山の墓地に眠っている。野田山は、16世紀後半に加賀藩主前田利家の兄利久を葬ったのが墓地の始まりであるそうだ。
野田山墓地に訪れた後に調べ物をしていると、ここは上海で抗日独立を掲げた尹奉吉(ユン・ボンギル、1908~1932年)=写真右=が逮捕後、処刑され埋葬された地であるということが分かってきた。これについては金沢における在日朝鮮・韓国人社会の中では、よく知られたことであるらしい。
尹義士といえば、私自身も留学中に韓国の至るところで写真を目にしてきた朝鮮半島を代表する独立運動家であり、日本帝国に対抗した「英雄」と言われる歴史的人物である。韓国では、知らない人はいないだろう。しかし、日本ではほとんど知られていない人物である。いわゆる伊藤博文をハルピンで銃殺した安重根と同列にされる「テロリスト」として位置付けられるが、知名度は安義士より低い。
日本のキリスト教界では、ヒトラーに対抗しようとしたプロテスタント教会牧師ボンヘッファーが高く評価される一方で、ファシズムに対抗した朝鮮半島出身者らが、反日感情や民族感情だけを理由に評価されず、名前すら知られていないということに歴史教育の歪みを覚えることがしばしばである。