外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会(外キ協)は1月29日、第35回となる全国キリスト者集会を、早稲田奉仕園(東京都新宿区)の会場とオンラインで開催し、「コロナ危機を生きぬく多民族・多文化共生社会と教会」のテーマのもと関係者ら約120人が参加した(マイノリティ宣教センター協力)。外キ協は、1987年の結成以来、毎年1月に全国協議会と全国集会を開催し、「日本の歴史責任」と「外国人住民基本法」の実現に向け、キリスト教界の意見・意思の表明と行動に取り組んできた。
28日、29日の全国協議会で行われた講演もオンラインで公開。有住航 (日本基督教団牧師)、李相勲(関西学院大学教員)の両氏がそれぞれ、「パンデミック・レイシズム・宣教」「和解と平和をめざす日・韓・在日教会の課題」と題して講演した。李氏は「戦後日本のキリスト教界が、一般社会に先駆けて植民地支配の問題性に気づけたのは韓国、在日のキリスト教との交流があったから」とした上で、今日の日韓和解を阻むものとして、徴用工判決や慰安婦訴訟の判決に端を発する韓国バッシングに象徴されるような差別意識を挙げた。
また、「あいちトリエンナーレ」をめぐる騒動や関東大震災における朝鮮人虐殺などを例に、「恥の体験」(歴史学者・酒井直樹氏)を恐れ否認する傾向について指摘。民族、国民などの属性による「単一基準」のアイデンティティを越えるため、「我々と彼ら」と二分法的に分断や憎悪を生み出すのではなく、イエスに従う者としての「隣人アイデンティティ」が必要ではないかと提唱した。
全国集会では、西千津(カトリック札幌教区難民移住移動者委員会)、マキン・サンサンアウン(日本バプテスト同盟牧師)の両氏が、コロナ禍で苦境に立たされている留学生、技能実習生、ミャンマー移民の過酷な現状と支援の実態について報告した。
集会で採択した「アピール 2021」は、「パンデミックの危機を乗り超えるためには、すべての人の命と尊厳、そして人権が守られる新しい社会を実現してゆくことが必要です。そしてそれは、私たちがめざしている多民族・多文化共生社会を実現してゆくことでもあります」「多民族・多文化共生社会の実現のために、私たちはこれからも、日本・韓国・在日教会の共同作業を通して、歴史に向き合い、真実と和解に向けた対話を進めてゆきます」と宣言している。