韓国では、新型コロナウイルスの感染者数の増加を受け、政府が決定するソーシャルディスタンスのレベルが昨年12月8日より首都圏では2.5、首都圏以外では2に引き上げられ、本コラム執筆の時点では、1月31日までそのレベルが維持されることが決定されている。
政府によって決定されるソーシャルディスタンスのレベルは、警戒レベルの低い順に1、1.5、2、2.5、3の5段階に分けられており、これに応じて防疫措置が定められている。1月17日時点での宗教活動関連の防疫措置を見ると、レベル2の場合は、「正規の礼拝などは座席数の10%以内に制限。集会・食事禁止」、レベル2.5の場合、礼拝は「非対面、20人以内に人数を制限。集会・食事禁止」となっている。レベル2.5の場合の20人とは、オンライン配信用の礼拝映像を作成するために必要な人数ということのようである。
昨年12月8日のレベル引き上げ時点から1月中旬まで、レベル2の「首都圏以外」にあるものを含むすべての宗教施設における対面礼拝が禁止されていた。このような措置がとられたのは、宗教施設が集団感染の主要経路とみなされてきたためである。統計によれば、昨年12月の集団感染者数は宗教施設(その大部分がプロテスタント教会)が療養病院に次いで多かった。
最近では、インターコープ宣教会が集団感染の主要経路となった。同宣教会は、海外宣教を目的とした団体であり、その宣教方法や極端な終末論などが問題視されてきた団体でもある。慶尚北道にある同宣教会の施設において大規模集会が繰り返し開催されたことが今回の集団感染の発生につながった。
このような中、プロテスタント30教派が加盟する韓国教会総連合(韓教総)が1月に声明を発表し、インターコープ宣教会が防疫規則を守らなかったことなどを批判した。韓教総はこの間、対面礼拝の実施許可を政府に求めてきた団体でもある。1月7日には韓教総の代表者らが丁世均首相と会談し、対面礼拝の実施に関する要望を伝えている。
一方、対面礼拝を強行する教会もあった。そのうちの一つであるセゲロ教会(釜山市)は、1月3日と10日に1千人規模の対面礼拝を実施し、感染病予防法に基づく礼拝施設の無期限閉鎖処分を受けると共に社会的な批判を浴びている。
教会側の要望が強かったためか、1月18日付で教会の礼拝に関する防疫措置が緩和されることとなり、首都圏の教会の場合には座席数の10%まで、首都圏以外の教会の場合には20%までの対面礼拝が許可されることとなった。
韓国の宣教学者であるファン・ビョンベ教授(協成大学)は、ポスト・コロナ時代における韓国教会のあり方を考察した論考の中で、現状を踏まえながら、礼拝堂にて行われる儀式としての礼拝だけでなく、生活の現場において神のみ言葉に従って生きる「生き方としての礼拝」が重要であると指摘している。これは、儀式としての礼拝に固執し、コロナ禍にあって社会的信頼を失いつつある韓国教会に向けられた指摘であるが、日本にある教会にとっても示唆するところの多い指摘ではないだろうか。
い・さんふん 1972年京都生れの在日コリアン3世。ニューヨーク・ユニオン神学校修士課程および延世大学博士課程修了、博士(神学)。在日大韓基督教会総会事務局幹事などを経て、現在、関西学院大学経済学部教員。専門は宣教学。