香港国家安全維持法の施行後、キリスト教界に対する圧力も強まっている。7月7日、香港の左派系(親中派)新聞の「大公報」と「文匯報」は、香港牧師・教職者ネットワークが発表した「香港2020福音宣言」を取り上げ、同宣言が「信仰を持つ人々を洗脳し、国家分裂を策動するよう意図している」と指摘し、袁天佑、邢福増、陳恩明など宣言の起草者たちを名指しで批判している。両紙は、同宣言のPR動画で昨年の逃亡犯条例改正案反対のデモの場面や、「香港を取り戻せ、時代の革命だ」と書いた旗が登場することに触れ、それが国家安全維持法に違反している疑いがあると報じている。その後、同ネットワークは当該動画を削除した。
両紙は「バルメン宣言になぞらえて書かれた『香港2020福音宣言』の背後には、政権転覆の意図がある」と指摘し、同ネットワークを牽制している。また「大公報」は、国家全国香港・マカオ研究会副会長・劉兆佳と著名な弁護士・清洪の見解として、「宣言が香港国家安全維持法に抵触する恐れがあり、宣言の動画作成に携わった関係者は、有罪が確定した場合、懲役3年から10年の判決となる可能性がある」とも報じている。
宣言の起草に中心的に関わった王少勇牧師は、香港のキリスト教メディア「時代論壇」(7月3日付)のインタビューの中で、「〔香港2020〕福音宣言はローザンヌ誓約の福音解釈を継承しており、全包括的な信仰の道筋を描くことを願っていたのであり、決して政治的な宣言ではなく、全体主義政権に対抗するバルメン宣言の特色は受け継いでいない」と語っているが、これによって当局の批判をかわすことは困難なようだ。(報告=松谷曄介)