都立校教員ら処分の不公正に異議 黒川前検事長の「訓告」受け公開質問状 2020年7月7日

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 「日の丸・君が代」の強制に異議を唱え懲戒処分を受けたキリスト者教員ら有志が6月30日、「賭け麻雀(マージャン)」を行った黒川弘務前検事長への処分が「訓告」に留まったことを受け、「公平公正な処分量定と言えるのか」と糺(ただ)す公開質問状を、安倍晋三首相、東京都知事、大阪府知事らに提出した。

 質問状では、黒川元検事長による常習的な賭博行為が国家公務員法、地方公務員法の「全体の奉仕者としてふさわしくない非行」や「信用失墜」行為に該当しないのか、「君が代」斉唱時の40秒の不起立・不伴奏が「信用失墜」行為とされたことよりも軽い処分が妥当かなどについて、任命権者としての回答を求めている。

 同日、都内で開かれた会見では、呼びかけ人である木村葉子(元東京都立高校教員)、根津公子(元東京都立特別支援学校教員)、佐藤美和子(元東京都公立小学校教員)、伏見忠(東京都立高校教員)の各氏が登壇。フェイスブック上でのやり取りを契機にSNSを通じて呼びかけ、1週間で教育関係者や牧師ら約400人の賛同が得られたことを報告し、それぞれが受けた処分やそれに伴う裁判との比較から「軽すぎる処分」への思いを語った。

 音楽教員としていわゆる「ピースリボン裁判」の原告となった佐藤氏=写真右=は、牧師の父と祖父を持つキリスト者として「天皇を神とたたえる『君が代』を弾かないことと、子どもたちに選択の自由を与えることは譲れなかった」と振り返りつつ、自身の処分が不伴奏による「訓告」のみだった一方、不起立を貫き免職覚悟で闘った根津氏を孤立させてしまったと悔恨の念を吐露した。

 公立学校の式典における「日の丸」掲揚、「君が代」斉唱をめぐっては、東京都教育委員会による2003年の「10・23通達」以来、全国的に締め付けが強まり、これまで東京、大阪で教員ら600人以上が戒告、減給、停職などの懲戒処分を受けたほか、短期間での異動や退職金の減額、再雇用の拒否などの差別的な処遇を強いられてきた。今回、授業のため会見に同席できなかった呼びかけ人の岡田明氏(東京都立高校教員)も、信仰に基づく不服従により処分を受け「予防訴訟」の原告となっていた。

 公開質問状の質問は以下の通り。


公開質問状

安倍晋三 首相
小池百合子 東京都知事
吉村洋文 大阪府知事
他 各任命権者様

 このたび安倍内閣は、黒川弘務検事長が賭けマージャンを行ったとして、調告としました。菅義保官房長官は、「法務省で必要な調査を行った上で、法務省および検事総長が調告相当だと判断し、決定した後、法相から私に報告があり、異論がない旨を申し上げた」と記者会見で説明しています。

 法を司る法務省と検事総長が、黒川検事長の行為を調告相当と考えていることは、全国の公務員に対して、新たな規範と処分量定の基準を示したことになると考えます。

 私たち公務員には、服務事故についての研修が頻繁に行われています。そこで今回の安倍内閣の決定を深く理解するために以下のことを質問します。

1.黒川検事長の常習的な賭博行為に対し、安倍内閣は懲戒処分ではなく、注意にすぎない「訓告」としました。しかし賭博行為は、国家公務員法第98条1項あるいは地方公務員法第29条の「全体の奉仕者としてふさわしくない非行」に該当しないのでしょうか。

2.利害関係者と金品のやり取りを行い、利害関係者が用意したハイヤーを使って帰宅した行為は供応接待や収賄罪とはならないのでしょうか。

3.常習的賭博行為や供応接待を受けたことは、国家公務員法第99条あるいは地方公務員法33条のいわゆる「信用失墜」行為にはあたらないのでしょうか。

4.黒川弘務検事長の「訓告」は、公務員の他の処分量定と比較して、公平公正であると言えるのでしょうか。

5.黒川氏以外の他の公務員も、「テンピン」レートの賭けマージャン等の常習的賭博行為を行った場合は、懲戒処分ではなく、「訓告」となるのが望ましいのでしょうか。

6.全国の教育公務員に対しては、「君が代」斉唱時の不起立・不伴奏などの40秒間の行為が「信用失墜」行為とされ、戒告や減給・停職などの懲戒処分が出されています。賭博や収賄は通常、刑事事件に該当しますが、「君が代」斉唱時の不起立・不伴奏などの行為に対する懲戒処分より軽い訓告が妥当と考えますか。また、その理由を答えてください。

 以上質問します。回答は2週間以内に文書でお願いします。

2020年6月30日

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