神を知らぬ者は心に言う。「神などはない」と。
詩編14編1節(参考箇所詩編14編1〜7節)
大人となった人間は神を必要としないというフロイトの命題は、19世紀以来、現代人の精神を養ってきました。しかし、無神論を標榜する者は、現代人に限らないことをこの言葉は明らかにします。世紀が変り、21世紀に突入した人間はあらためて「神」を必要とする気配を見せてきました。とくに最先端の科学を扱う人々の中からは、宗教が持つ意味を再検討する動きが見られるようになり、単純な言い方では、「神」がいないと科学は最終の答えをもつことができないとさえ言われるようになってきました。
とくに死の看取りに従事する医療現場では、死をめぐっての実存的危機的問いには医学は対応する術を持たず、宗教の役割が期待されるようになってきました。それらの問いとは「なぜ、わたしが死ななければならないのか」、「このわたしが死んだらどなるか」などなどの問いです。これらの問いには究極的な答えが提示されねばならませんが、そのためには成熟した宗教が、人間の危機的生の現実に正しくかつ適切に「神」が認知的であると同時に経験的に説かれねばなりません。
これからの教会の課題であると共に、今日を差し迫って生きる信仰者の課題でもあるのです。