イエスは、ペトロ、ヨハネ、およびヤコブを連れて、祈るために山に登られた。祈っておられるうちに、イエスの顔の様子が変り、服は真っ白に輝いた。 ルカ9章29節(参考聖書箇所同書9章28〜36節)
イエスの変容の出来事を記した箇所です。この出来事は出三十四章二十九節以下に記されたシナイ山でのモーセの十戒授与を思わせます。ルカは、モーセがエジプトでの奴隷であったイスラエルの民の解放の出来事である出エジプトの旅と、罪からの解放者イエスのエルサレムへの旅を重ねて見ているのです。 ルカは、モーセとエリヤが「イエスがエルサレムで遂げようとしておられる最期のことについて話していた」(31節)と記していますが、この「最期」という言葉は、聖書原語ではエキソドスと書かれており、<イエスの出エジプトの旅>とでも意訳することができる言葉です。イエスの「最期」(出エジプト)について、彼らが話していたとは、モーセがイスラエルの民を解放した出エジプトの旅は、メシアであるイエスにおいて完成したことを意味しています。 モーセは、目指したカナンの地に入ることなくモアブの地で死を迎えますが、イエスは乳と密の流れる地カナンでなく、エルサレムで死ぬことで罪と死から解放の旅を成就されます。しかもイエスのヘブル名はモーセの後継者ヨシュアと同じであることに思い至れば、神の計画の遠大さに驚かざるを得ません。