私に注がれた「まなざし」を感じる本
〈評者〉大石周平
「説教」終えて日が暮れて、今、日曜の夜長にこの本をむさぼるように読み終えました。礼拝後、夕方まで続いた会議のなかで、「先生の説教は、長くてカタくて消化不良になる」と言われてしまった後のこと。ずきんとうずく心の奥を見透かすような、表紙帯の言葉に目が留まりました。
「説教のない世界に今、旅立とう!」
思わず覚える共感。それにいくらか後ろめたさをも感じながら、本の扉を開きます。すると早速、溜め息まじりの引用句が、今夜の自分と重なりました。
「……今日モ失敗セリ……予ハ話ガ下手ナリ……」
そう力なく書きつけられた『柏木義円日記』の引用に始まる本書は、「説教者」を鼓舞して教え、奮起させる類の書物とは違います。「伝道者」に向けた本でありながら、その職責を問うよりも、務めに押し潰されそうな者を一人の弱い「人間」と認める等身大のまなざしが印象的です。そのため、教会のリーダーに限らず、誰が読んでも、直接心のひだに触れる言葉に出会える本です。