【日本YWCA】 北京会議から25年! あらゆる女性が生きやすい社会に向けて(1)

近年、ジェンダーに基づく差別や性暴力をなくそうとする気運が高まっています。

「女性の権利は人権」という当たり前のことが国際レベルで宣言されたのは、今からたった25年前。1995年に開かれた世界女性会議(通称:北京会議)でのことです。このとき、各国政府やNGOがとるべき行動指針を示した「北京行動綱領」が採択され、国際社会は「ジェンダー平等と女性のエンパワメント」に向けて歩み出したのです。

あれから25年。日本の社会はどうでしょう? 何が変わり、変わっていないのか。そもそもジェンダー平等とは、女性のエンパワメントとは。残された課題にどう取り組むのか――。現場で活動する女性たちのメッセージとこれまでの歩みを手掛かりに、みんなで考えてみませんか。

個人的なことは政治的なこと!
あらゆる女性たちがつながり支えあって

清水祐子(横浜YWCA会員)

20代半ば、まだ「自分探し」から抜けきれない私は、研修中のNGOの計らいで「北京会議」に参加しました。中国政府は、「人権」と「NGO」に対し、厳重な警備を敷きましたが、世界中から集まった女性たちは警備など眼中にありませんでした。「ジェンダー」が初めて公式に使われた会議の熱量に、「歴史が動いている」感覚に見舞われました。

NGO会議では、社会的背景は違っても構造や制度のひずみが、性的な犠牲に表れることは、世界共通の課題であることを学びました。また、当時、性産業の合法化の動きがあったオランダの性産業で働く女性が、「私はコンドームをつけない客を断れるが、生活のために断れない女性がいる」と発言したことが印象に残っています。さらに、高齢の元日本軍「慰安婦」の毅然とした証言が、性別によるあらゆる差別や屈辱を受けてきたあらゆる女性たちに、計り知れない勇気と希望を与えたことは、今も忘れられません。

中国政府による厳重な警備が敷かれた北京会議の会場で。1人の女性が警備隊の列に割り入ってほほ笑んだ(1995年)

性の尊厳と人権は切り離して語れない

北京会議から25年、日本では、女性への暴力防止、児童買春・児童ポルノ禁止、男女共同参画の推進に関する法律や性犯罪に関する刑法改正など、法制度は整備されつつあります。しかし、現実には、女性に対する暴力や性犯罪は後を絶たず、声を上げた被害者への誹謗中傷は目に余ります。この現状を許している要因は、一人ひとりに根強く刷り込まれた性別役割のステレオタイプにあると思います。私自身にも「妻」と「母」の固定観念が、深く刷り込まれていることに愕然としました。それも、多少の知識と多様な生き方の女性たちとの出会いのおかげで自身の偏見を解放でき、その快感を知ることができました。

2021年、小学校でSDGsを入り口に「ジェンダー平等の実現」を学ぶ時代です。今春からは学校の性教育に、「生命(いのち)の安全教育」が加わります。「国際性教育ガイダンス」レベルには全く及びませんが、国は意図しない妊娠や性被害の低年齢化の対策に、性教育の見直しを迫られました。子どもの成長過程で、性の尊厳と人権は切り離すことができず、それを土台にした人間関係を学ぶことで、ジェンダーの視点を自然に身につけることは、性暴力の根絶に不可欠なことです。YWCAのユースによる中高生向けの性教育プログラム「RiseUp! School Visits」」はとても楽しみです。

#MeTooの影響力を「リアル」にするためには

「♯(ハッシュタグ)運動」によって、北京会議での変化とは比較にならない速さで社会が動きました。SNSは危険性もありますが、個人が発信する「痛み」や「困難」に対し、国や政治を超えて賛同や共感を表明できます。個人の問題を社会の問題として普遍化して捉えることは、ジェンダー平等の実現の一歩です。#MeTooの影響力を「リアル」にするためには、あらゆる女性たちが「個人的なことは政治的なこと」という視点でつながり支え合えるかが鍵です。「政治的なこと」を決定するさまざまな場面に、生きづらさに共感する女性たちの参画を進めていきたいです。その一つとして、静岡・湘南・横浜YWCAでは、「女性のために『イチからわかる政治』セミナー」を開催しています。

年表でチェック! 1995年から現在までの「女性の人権とエンパワメント」の歩み

イラスト:大島史子
出典:公益財団法人日本YWCA機関紙『YWCA』4月号より転載
https://www.ywca.or.jp/pdf/2021/ywca_761.pdf


YWCAは、キリスト教を基盤に、世界中の女性が言語や文化の壁を越えて力を合わせ、女性の社会参画を進め、人権や健康や環境が守られる平和な世界を実現する国際NGOです。

 






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