【解説】バレンタインデーってどんな日? 〜キリスト教的な意味ってあるの?〜

バレンタインデーが近づいてきました。女性から男性にチョコレートをプレゼントして愛を告白する日、として日本では定着していますが、その由来だとか本来の意味だとかは意外と知られていないのではないでしょうか。と、いうわけで、今回はバレンタインデーについて解説いたします。

意外と知らないバレンタインデー

・バレンタインデーってそもそも何の日?

バレンタインデーは正式名称を「セント・バレンタインデー」と言い、また英語では「St.Valentine`s Day」と言います。「聖」とか「St.(セイント)」という文字が示すように、これはもともとキリスト教の聖人を称える日で、その称えられる聖人は「聖バレンティヌス」さんです。

・聖バレンティヌスって誰?

聖バレンティヌスは3世紀頃、つまりまだキリスト教がローマ帝国の国教になっておらず、むしろ迫害を受けていた頃に生きたキリスト教の聖職者です。

当時のローマ皇帝、クラウディウス2世は「兵士が結婚なんてすると、士気が下がる!」と、兵士たちの結婚や恋愛を禁止していました。それで多くの兵は愛する人と結ばれることができずに悲しんでいました。それを見て「これはかわいそうだ!」と思ったバレンティヌスさんは、そんな兵士たちのためにこっそりと結婚式を行いました。これに感謝した兵士たちには、そのままキリスト教徒になる人も少なくありませんでした。

これを聞いた皇帝は「兵士たちを勝手に結婚させた上に、禁教であるキリスト教に回心させているとはけしからん!!」と非常に怒り「二度とそんなことを行わないように!」と命令しましたが、バレンティヌスさんは「愛する者たちが結ばれることを妨げることはできない!」と、その命令を無視して結婚式を行い続けたので、最終的に処刑されてしまいました。この処刑の日が2月14日で、この日を「バレンティヌスさんの記念日」つまり「聖バレンタインデー」として記念することになりました。そして彼は恋人たちの守護聖人とされ、その記念日は「恋人たちの祝日」ということにもなったんです。

ただ、この聖バレンティヌスさんが実在したかどうか、またその処刑の日が2月14日であったかどうかは確かではないようで、現在はカトリック教会の祝日からバレンタインデーは除外されています。

・別の説もあります

・・・というのが、バレンタインデーの起源についての有力な説ですが、なにせ1700年以上も前の話ですから分かっていないことも多く、別の説もあります。その一つはローマ神話に由来するというものです。2月14日はもともとローマ神話の家庭と結婚を司る女神ジュノーの祝日で、この日にはくじ引きによって男女のカップルを作る、古代のお見合いパーティのような風習があったのだそうです。やがてくじ引きは行われなくなって純粋な「恋人たちの祝日」となり、それを後のキリスト教会が「聖バレンタインの祝日」として残したという説です。

いずれの説にせよ、風習や出来事に由来する祝日であって、クリスマスやイースターとは違い、聖書に根拠のある祝日ではないんです。ですから教会が公式にバレンタインデーのイベントを行ったりすることはありません。

とはいえ、教会のメンバー同士で義理チョコを贈りあったりすることはあります。

日本のバレンタインデーは特殊?

日本ではバレンタインデーは「女性から男性に」「チョコレートを」贈る日とされていますが、実はこの「ルール」は欧米にはなく、日本や韓国や台湾あたり限定のルールなんだそうです。多くの国ではこの日に贈り物を贈るのは男性からでも女性からでもよく、また贈るものもチョコレートとは限りません。

日本にこの文化が流入したのは戦後まもなくのことで、進駐軍によりチョコレートが普及した時期と重なります。クリスマスなどと同じように、その普及の原動力となったのは商業でした。「一年に一度、女性から愛を打ち明けていい日」という、今から思えば「他の日は女性から打ち明けてはいけないのか!」と女性差別にも思われるようなキャッチコピーもあったそうで、1970年ごろまでにこの習慣は日本に定着し、その後発展していきました。それまで結婚と言えばお見合いが主流だったところ、だんだんと恋愛結婚が増えていった時期とも言えます。日本人の恋愛観や結婚観の変化と連動して成長したイベントだということです。

じゃぁ、ホワイトデーは?

バレンタインデーの1ヶ月後、3月14日に男性から女性にバレンタインの贈り物のお返しをするというホワイトデーは、完全なる商業キャンペーンであって、キリスト教的な意味はまったくありません。これも日本、韓国、台湾あたり限定のイベントです。

ちなみに韓国ではさらに1ヶ月後の4月14日に「ブラックデー」と呼ばれるイベントがあり、この日はバレンタインデーもホワイトデーも残念ながら一人寂しく過ごしてしまった人が集まって、黒い服を着て、黒い「チャジャンミョン」という料理を食べる日なのだそうです。なんだか残念な日のようにも思えますが、この日をきっかけに恋が芽生えてカップルになる人たちもいるのだそうです。しかしもちろんこの日もキリスト教的な意味はまったくありません。

他の国では何をしてるの?

欧米各国では先にも書きました通り、「女性から」とか「チョコレートを」というルールがないので、それぞれ思い思いのプレゼントを親しい人や恋人に贈り合うのだそうです。ただ、日本のように必ずやるものでもなく、「贈ることもある」程度のようですが。

そのプレゼントには「from your Valentine」と書いたカードを添えることが多いのですが、これは先述の聖バレンティヌスさんが、牢獄から書いた手紙の最後にそう書かれていたことが由来なんだそうです。そこから派生して「Be my Valentine」など、様々なバリエーションが広がっています。

中国やベトナムなどでは日本とは反対に、男性から女性にプレゼントを贈る習慣があるようです。

バレンタインは教会へ!・・・ということはありませんが

バレンタインデーはキリスト教に由来する祝日ではあるものの、教会の公式の祝日ではありませんから、この日に教会に行っても特に何もありません。「バレンタイン礼拝」とか「バレンタイン・キャンドルサービス」とか何かロマンチックなイベントを期待されても困ってしまうわけです。

とはいえ、こんなタイミングで誰か大切な人と教会に行ってみるのも楽しいかと思います。教会からの帰り道にカフェにでも寄ってチョコレートケーキか何かを食べるというのもデートとしておしゃれかと思います。・・・と、安心してそんなデートができるように早くこのコロナウイルス騒動が終わることを祈りつつ。とにかく皆様、素敵なバレンタインデーをお迎えください。

それではまたいずれ。

横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

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