日本初のプロテスタント教会創設 祈りの発起人・篠崎桂之助の碑 TCUに寄贈 

今から150年前の3月10日、日本人を会員とする最初のプロテスタント教会である日本基督公会(現日本キリスト教会横浜海岸教会)が、横浜山下町に創立された。その創立につながる初週祈祷会の発起人である篠崎桂之助(しのざき・けいのすけ、1852〜1876年)の碑が、この夏、東京基督教大学(=TCU、朝岡勝理事長)に寄贈された。

TCUに運ばれた「右篠崎桂之助の碑」。山口陽一学長(=写真左)と朝岡勝理事長(写真右)。(写真提供:TCU)

篠崎桂之助は静岡県生まれの旧幕臣で、18歳の時にバラ塾に入学した。バラ塾は、米国改革派教会宣教師のJ・H・バラが、現在、横浜海岸教会のある居留地167番に建てた英語教場で、石造りの小さな会堂には篠崎を含め20人が学生が学んでいた。そこで英語や聖書を学び、その教えに深く共鳴した篠崎は、初週祈祷会を発案し、その祈祷会での熱心な祈りをとおして、1872年に日本基督公会が誕生した。そして、その日本基督公会において、8人の若者と一緒にバラより洗礼を受けた。

クリスチャンとなった篠崎は、有力な信徒として活躍したが、肺結核を罹病し、24歳の若さで独身のまま亡くなってしまう。短い人生でありながらも、会津の井深梶之助(いぶか・かじのすけ、1854〜1940)には新政府への遺恨を捨てさせ、クリスチャン実業家の原胤昭(はら・たねあき、1853〜1942を病床で励まし続けるなど、日本のキリスト教教会の重鎮となる人物に与えた影響は計り知れない。また、日本のプロテスタント教会のリーダーである植村正久(うえむら・まさひさ、1985〜1925)は、篠崎の人柄にについて「寡黙であり、謹直であり、熱心であり」と伝え、「彼のような人は、実に『結果を見ずに死んだ創業者』の一人である。われらはできるだけこういう人物を記憶しなければならない。」と述べている。

篠崎の墓を建てたのは、共に洗礼を受けた櫛部漸(くしべ・すすむ、1845〜1887)で、櫛部は、築地居留地に施療所を建設中のヘンリー・フォールズに出会い、協力者となり、1875年には築地に病院を開院した。のちに、植村正久も篠崎の墓の手入れをしたという。

谷中霊園に置かれていた篠崎桂之助の碑(写真提供:TCU)

碑は、櫛部芳子氏からTCUに寄贈された。芳子氏の夫忠一氏(故人)は櫛部漸の曾孫にあたる。8月23日に、東京都の谷中霊園(甲新12号50側)から移動した。高さ160センチメートル、幅100センチ、厚さ13センチで、漢学者でメソヂストの中村正直(敬宇)の撰文、書家の平山省斎の篆刻で、以下のように記されている。

篠崎桂之助君之碑
君名桂之助篠崎氏号桂香父具良仕  君、名は桂之助、氏は篠崎、桂香と号す。父と具に良く幕府に
幕府君性敦厚好学勤勉超群童十九  仕う。君、性は敦厚にして学を好み、勤勉群を超す。童十九
歳至横浜就米国教師抜拉氏学英書  歳にして横浜に至り、米国教師バラ氏に就きて英書を学ぶ。
迨日本聖教会始立君被選為長老誠  日本に聖なる教会を始めて立つるにおよび、君、長老の為に
心任職多所裨益衆咸属明治九年   選ばれ誠心任職し属(皆輩)に裨益する所多し。明治九年
九月二十五日病没距其生嘉永五年  九月二十五日病没距す。其生は嘉永五年
五月十五日享年二十有五葬于谷中  五月十五日、享年二十有五、ここ谷中天王寺に葬る。
天王寺其友人属余銘其墓銘曰    其の友人属余銘す。其墓銘に曰く

少年好道 長老効職           少年道を好み 長老の職を効す
霊兮不滅 永傍講席           霊兮不滅にして 永く傍に講席す

明治十二己卯六月
中村正直撰
平山省斎篆額

TCUの山口陽一学長は、8月25日のTCUの礼拝で、「祈りからはじまる」と題してメッセージをした。その中で、今回寄贈された「篠崎桂之助君の碑」は、「日本プロテスタント教会発祥の記念碑」であることを伝え、次のように学生に語った。

日本のプロテスタント教会の始まり、そこには篠崎桂之助の初週祈祷会の発案と、若い仲間たちの熱心な祈りがありました。バラはそこにリバイバルを経験しました。日本でも、聖霊の働きの中で最初の教会が設立され、それから150年目の歩みを私たちはしています。コロナ禍を超えてこれからの日本宣教にあたって行きたいと思います。その一つの鍵を握るのがTCUであり、皆さんです。私もそうしたいと思います。皆さんも祈りから始めてください。

そして、日本基督公会設立に立ち会ったS.R.ブラウンの手紙を紹介したうえで、こう学生に呼びかけた。

日本に最初のプロテスタントの教会が設立されて、やっと150年です。この記念の年に、思いがけず、その記念碑がTCUに来ました。祈りと聖霊の働きから始まった日本のキリストの歴史を、聖霊を求める祈りによって受け継いでまいりましょう。

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