【あっちゃん牧師のおいしい話】第5回 これはジュースだ! 齋藤篤

先日我が家に届いたひと箱の宅急便。中を開けてみると、1本のオリーブオイルの瓶が入っていました。ベンブラヒムさんの御実家で栽培された有機のオリーブを、ぜいたくに搾(しぼ)ってつくられたエクストラバージンオリーブオイルでした。ベンブラヒムさん(アブラハムの息子という意味なんだそうです)は、チュニジアのご出身。チュニジアはイタリアから地中海を挟んだ南側に位置する、北アフリカの一国です。そのオリーブオイルを、クリスチャンであるお妻さま(注:僕が気に入って使っている言い方です)とともに販売されておられます。

早速瓶のふたを開けて、スプーンに注いで味見をば。
ん?ん?なんだこれはー!

オリーブの青々とした香りが気持ちよく鼻を突き抜けます。それと同時に、えぐみも苦みもないさわやかな味わいが、口の中いっぱいに広がります。油なのに、油を感じさせるというよりは、フレッシュなオリーブの高級ジュースを飲んでいるような気分にさせられました。だって、これはオリーブの果汁なんだから、飲んだって全然おかしくないじゃんねー。と自分に言い聞かせながら、スプーンで何杯もおかわりしてしまいそうな誘惑に駆られてしまう、そんなオリーブオイルでした(関心のおありな方は、上の文章からヒントを得て、ググってみてください。必ず出会うことができると思います)。

あっちゃんのおいしい話。第5回目は「オリーブオイル」を取り上げてみたいと思いました。5回目にして食材に突入したってことは、いよいよネタ切れか、と思われた皆さん!そんなことは絶対にありませんよー。聖書の世界で、オリーブオイルの存在は人々の食生活を支えたものすごいアイテムなんだということを、皆さんとシェアしたいと思ったのです。食生活だけではありません。私たちの健康にも、オリーブオイルは大きく関係していたという話です。

こんな聖書の言葉があります。

あなたがたの中に病気の人があれば、教会の長老たちを招き、主の名によってオリーブ油を塗り、祈ってもらいなさい。
ヤコブの手紙5章14節(聖書協会共同訳)

この日本では、実はオリーブオイルは「薬品」でもあるんです。第3類医薬品に指定されていて、日本薬品方では「オリブ油」として販売されています。効能効果は「皮膚の保護、日焼け炎症の防止、やけど、かぶれ」と記載されています。上に掲げたのは、オリーブオイルが「祈るための道具」として用いられていたようです。わたしの属するプロテスタント教会ではすっかり忘れられている病者の塗油は、今でもカトリック教会では秘跡のひとつとして大切にされているわけですから、聖書に書かれたことを忠実に守り続けているカトリック教会に、心からリスペクト!

そして、日本薬局方に記載されているようなオリーブオイルを使った治療例も、聖書に記されています。傷薬としてオリーブオイルが有効利用されていた、ということですね。

近寄って傷にオリーブ油とぶどう酒を注ぎ、包帯をして、自分の家畜に乗せ、宿屋に連れて行って介抱した。
ルカによる福音書10章34節(聖書協会共同訳)

この聖書の言葉、「善いサマリア人」と呼ばれる物語の一場面です。強盗に襲われて息絶え絶えの旅行者を助けたサマリア人が、傷口にオリーブオイルを注いで手当をしたことが記されています。清潔な水を得ることができず、砂ぼこりの舞うイスラエルという環境で、ぶどう酒のアルコールが消毒の、オリーブオイルが露出した傷を保護する役割を果たしたというわけです。食用以外でも、オリーブオイルとぶどう酒が、いかに人間生活に必要なものであったかを思わせられます。

聖書で、オリーブオイルとぶどう酒が語られるとき、なぜか「新しい」という言葉が付け加えられているのは、とても興味深いことです。「新しいオリーブ油と新しいぶどう酒」という風にこれらのふた品が語られているのは、ある意味で「収穫の豊かさ」を象徴するものであったと言えます。オリーブの収穫も、ぶどうの収穫を経て醸造された新しいワインが供されるのも、ちょうど今頃の時期、10月や11月の風物詩であり、初物として神様に食べていただいて、祝福されていることを喜び合う絶好のシーズンが、まさに今なのです。秋の終わりに、世界中の多くの教会で収穫への感謝が神様にささげられて、礼拝がおこなわれるのも、なるほど納得です。

そんなオリーブオイル。日本食にも抜群の相性なんです。その中でも僕が一番好きなのは、お豆腐にたっぷりのオリーブオイルと塩をかけていただく、冷ややっこです。我が家の最寄り駅近くにある、それはそれは美味しいお豆腐を買ってきて、最高のオリーブオイルと、天然塩でいただいたときにゃ、豆腐の甘味とオリーブオイルのさわやかさの出会いが、口で爆発するのは言うまでもなし!ぜひお試しください(写真は、たまたま我が家にあったチュニジア製のお皿に乗せた豆腐。チュニジアに敬意を表しつつ)。

次回も、おいしい話を一緒にいただきましょう。では!

齋藤篤

齋藤篤

さいとう・あつし 1976年福島県生まれ。いわゆる「カルト」と呼ばれる信者生活を経て、教会に足を踏み入れる。大学卒業後、神学校で5年間学んだのち、2006年より日本キリスト教団の教職として、静岡・ドイツの教会での牧師生活を送る。2015年より深沢教会(東京都世田谷区)牧師。美味しいものを食べること、料理することに情熱を燃やし、妻に料理を美味しいと言ってもらい、料理の数々をSNSに投稿する日々を過ごしている。

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