楽劇「ガラシャ」開幕 細川ガラシャの信仰を華麗かつ荘厳に歌い演じる

「楽劇の祭典」20周年特別公演「楽劇『ガラシャ』」(関西楽劇フェスティバル協議会主催、カトリック東京大司教区、カトリックイエズス会、日本聖公会東京教区、日本福音ルーテル教会東教区後援)が4月21日、武蔵野市民文化会館(東京都武蔵野市)大ホールで上演された。信仰に生きたガラシャの生涯を、二期会トップらが華麗かつ荘厳に歌い演じた。

今回で20回目となる「楽劇の祭典」は、日本の3大舞台芸術である能・文楽・歌舞伎を中心とする音楽祭(フェスティバル)。2001年8月に、心理学者で文化庁長官も務めた河合隼雄氏を初代会長として活動を開始した。この日上演された「楽劇『ガラシャ』」は、歴史家の笠谷和比古氏(国際日本文化研究センター名誉教授)が『信長の自己神格化と本能寺の変』(宮帯出版)で提示した本能寺の変に対する新説を、ベースにオペラの様式を用いながら、能・狂言の手法も取り入れて表現した音楽劇。

同作は、明智光秀の娘にして細川忠興の妻となり、のち洗礼名をガラシャとするキリスト教徒として生き、関ヶ原合戦の推移の中で壮絶な最期を遂げた細川ガラシャの波乱の生涯が描かれている。ただし、あくまでも自由な空想を交えた物語として構成されており、本能寺の変と関ヶ原合戦という二大歴史的事件を踏まえつつも史実の再現ドラマというわけではない。ガラシャの信仰の深奥が物語を支える大事なテーマとなっている。

能の様式を基本とした舞台装置はいたってシンプル。それでも、登場人物の衣装の配色や、それらを映しだす照明が舞台の上を華やかにする。能舞台の節回しと、オペラでの歌唱は違和感なく融合され、それは、戦国時代に西欧からきたキリスト教に入信し、その一方で戦国の世の犠牲となったガラシャの物語を写し出す鏡のようにも感じさせた。

心に残るのは、第2幕のガラシャの改宗。本能寺の変から5年経ち、すでにキリシタンとなったガラシャに、バテレン追放令が出たことで夫である細川忠興が棄教を迫るのだが、「できませんぬ、この教えは、わらはにとりて、ただ一つの救いの道……」と言って一歩も譲らぬガラシャ。神に祈りをささげるうちに、場面は暗転し、明るくなると礼拝堂にいる忠興とガラシャの姿が現れる。ベルリオーズの楽曲が流れるなかで二人が和解するシーンは美しく、まるで絵画を見ているようだ。

ガラシャを演じたのは、イタリア人作曲家V・チマッティの「細川ガラシア」(東京オペラシティーホール)でも2度主演を務めるなど、この役柄の第一人者である遠藤久美子氏。また細川忠興には、日本の声楽界におけるトップ歌手として盛名を馳せる稲垣俊也氏。クリスチャンである2人にとってこの役柄への思いはいかばかりだろうかと考えずにいられない。さらに、明智光秀役には、舞台だけでなくテレビドラマでも活躍した浜畑賢吉氏が演じるなど、第一線で活躍する歌手、演者がそろう上質な舞台となった。

昼の部を観劇した女性は、「構成がしっかりしていて、ダイナミックな舞台で感動しました。特にガラシャの改宗のシーンには胸打たれました。ガラシャと忠興の夫婦愛も描かれていてよかったです」と感想を語った。

 






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