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◆1933年5月27日 映画『三匹の子ぶた』公開
『三匹の子ぶた』はイギリスで口承伝承されてきた物語の一つで、最初に出版されたのは18世紀後半のことでした。数あるメルヒェンの一つでしかなかったのでそれほど広くは知られてはいませんでしたが、1933年にウォルト・ディズニーによってアニメ化されると、一気に世界的に知られる物語となりました。口承伝承の物語を集めたものと言えばグリム童話集が有名ですが、この『三匹の子ぶた』はグリム童話集には収録されていません。それはグリム兄弟が主に活動したのはドイツだったからです。しかしこの物語にはグリム童話の『狼と七匹のこやぎ』などと類似点が多々あります。
例えばどちらも「悪役」が狼です。これは他にも『赤ずきん』などにも見られる特徴ですが、当時のヨーロッパの童話では狼は典型的な悪役として登場します。この理由の一つには聖書でも狼が悪の象徴として描かれることが多いことがあげられます。イエス様も弟子たちに「さあ、行きなさい。いいですか。わたしがあなたがたを遣わすのは狼の中に子羊を送り出すようなものです(ルカ10:3)」と言っていますし、イザヤ書では天国の描写として「狼は子羊とともに眠り(イザヤ11:6)」とあります。
しかし聖書だけで理由づけるわけにもいきません。なぜなら聖書には人間の脅威となる動物として、たとえば獅子も記されているからです。しかも聖書に登場する回数は「狼」の12回に対し、「獅子」は120回を超えます。ではどうして獅子ではなく狼がヨーロッパで「悪役」になったのでしょう。これは非常に単純な理由で、ヨーロッパにはライオンは住んでおらず、人々の日常的な脅威が狼だったからです。
日本の昔話では狼が悪役の話はそれほど多くはありません。もっぱら悪者になるのは狸や狐です。昔話の悪役に注目するだけでも、文化の違いがわかるものです。そんな読み方をすると、大人でも昔話は大いに楽しめますし研究対象として面白いものです。
それではまた。

MARO 1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。 10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。
著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)2022年3月15日発売。