マイケル・ラプスレー氏、庭野平和賞授賞式で講演「地獄の中で癒しを生み出し続ける」

第39回庭野平和賞(庭野平和財団主催)の贈呈式が14日、オンラインで開催された。同賞は、世界平和の推進に顕著な功績をあげた宗教者また宗教団体を対象に毎年贈られるもので、今年2月、南アフリカの聖公会司祭であるマイケル・ラプスレー氏(73)が選ばれた。贈呈式は約180人が視聴した。

マイケル・ラプスレー氏。© 2022 Niwano Peace Foundation

マイケル・ラプスレー氏は、1949年、ニュージーランド生まれ。71年に聖使修士会に入会し、73年にオーストラリア聖公会の司祭に按手され、同年、アパルトヘイトのさなかにあった南アフリカ共和国に派遣された。そこで黒人らへの差別実態を目の当たりにし、反アパルト運動に身を投じ、その中で、手紙に仕掛けられた爆弾で両手と右目を失ってしまう。この事件を機に、アパルトヘイト下の暴力で傷ついた人々の体験や悲しみに耳を傾けて、参加者と共に分かち合う「記憶の癒(いや)し」ワークショップを開始。さらに「記憶の癒し研究所」を設立して、南アフリカのみならず世界中で暴力に苦しむ人たちに癒しと和解をもたらしている。

同財団ではこうした働きを高く評価し、庭野平和賞の使命と軌を一にするものであることから、ラプスレー氏への顕彰を決定した。贈呈式では、同財団名誉会長の庭野日鑛(にわの・にちこう)氏より賞状と顕彰メダル、賞金2000万円が贈られた。続いて、「地獄の中で癒しを生み出し続ける」と題して、南アフリカよりオンラインをとおして受賞記念講演が行われた。

冒頭、原爆詩人・栗原貞子の「生ましめんかな」を朗読し、「戦争の終結を願うとともに、戦争で亡くなったすべての人々のために、そして過去の行為に今も心を苛(さいな)まれている兵士たちのために、お話しをさせていただきたい」と語った。

オンラインで講演するラプスレー氏。(オンライン映像を撮影)

ラプスレー氏が取り組む「記憶の癒し」とは、憎しみ、復讐心、恨みをはじめ、心の中のさまざまな毒素を取り除くためのプロセスであり、「記憶の癒し」ファシリテーターの役割は、歴史の語り部を支え、安全な空間を作り、平和の「出産」を助ける「助産師」であると話した。

また、「記憶の癒し」の活動には、「ジェンダーに基づく暴力」と「幼少期のトラウマ」という二つの共通テーマがあることを伝え、ジェンダーに基づく暴力は、人類の歴史に残された最古の傷ではないかと問いかけた。そして、宗教界の組織の多くは人間の性に関する問題で躓いた経験を持ち、この問題に対して最も抑圧的な姿勢を貫いてきたことを指摘。あらゆる主要宗教の指導者たちがLGBTQIA+の人々に対して、これまで抑圧に加担してきたことを公式に謝罪すべきだと語った。

アパルトヘイトとの絶え間のない闘いのなか、その最前線に掲げた目標のひとつが死刑制度の廃止であったことも明かした。かつてプレトリアで、黒人や貧しい人たちの死刑が執行されていたが、現在の南アフリカでは死刑は廃止されている。ラプスレー氏は、世界中のすべての国が命を選択し、死刑を廃止するのを生きて見届けたいと言う。

また、ロシアによるウクライナ侵攻にも言及し、ロシア兵もウクライナ兵も、今後何十年も良心の呵責や心の傷を抱えて生きていくに違いないと述べ、その傷は、将来の世代にも受け継がれていくだろうと案じた。そして、核戦争の脅威に直面していると述べ、軍国主義を経験し、かつ原爆による深い傷をその記憶に留める唯一の被爆国として、日本は核軍縮に向け新たな世界運動を支援すべき特別な立場にあると力を込めた。

再び、栗原貞子の詩を引用し、次のように締めくくった

私たちはみな、歴史が負った傷を癒し、変革的正義に向けた活動をとおし、平和を生み出す助産師になることを神から託されているのだと信じます。私の父は第二次世界大戦中、対日戦線の兵士として従軍しました。戦争に行く前の父と、戦争から帰った父は別人のようだったと母がある日話しておりました。今日、父は天国から私に、そして皆さんに笑顔を見せてくれているものと信じます。

「生ましめんかな/生ましめんかな/己が命捨つとも」

 

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