【インタビュー】卒業後も「教会を愛する」クリスチャンを育てる KGK総主事と副総主事に聞く(2)

 

──創設から70年ということですが、KGKの歴史について教えてください。

大嶋:1947年、早稲田大学でスタートしました。当時、教室不足のために日曜日にも授業を実施する大学に対して、一人のクリスチャン学生が反対し、署名運動を行いました。日曜授業が中止された後も、もう一人の学生と共に「キリスト者学生会」の名で学内の友人のために祈祷会を続けたのがKGKの始まりです。それが近隣の大学へと広がり、夏期学校の開催などを通して、関西、東北、そして全国へと広がっていきました。「キリスト者学生会」(Kirisutosha Gakusei Kai)という日本語の名称は、そのスタートを考える上でとても大切な意味があります。また、世界的にはIFES(国際福音主義学生連盟)に属しており、各国でIFESに属する宣教師の協力も大きな助けとなりました。

総主事の大嶋重徳さん

──学生は今どのくらいいますか。

大嶋:北海道から沖縄まで9地区に分かれて活動していますが、KGK会員の学生が誘っている友だちも合わせれば全部で1500人くらいです。

──KGKの特徴を教えてください。

大嶋:KGKには「3本柱」というのがあって、まず、聖書を誤りない神の言葉として信じる「福音主義」、次に、諸教会から祈って派遣された学生が互いの教会を尊重し、福音宣教のために協力する「超教派」、そして「学生主体」です。中でもいちばん特徴的なのはこの学生主体で、スチューデント・イニシアティブというのがKGKにとってすごく大事な柱になっています。KGKの伝道主体は学生たちであって、主事は先生ではなく、同労者という思いがとても強いんですね。「弟子訓練するぞ」というよりも、むしろ学生たちに湧(わ)き上がってくるものを私たち主事は支えていくのであって、主事たちは学生に寄り添い、共に御言葉に聴いていくコーチのような存在です。

──「学生主体」はどういうところに表れていますか。

大嶋:学生主体の表れるいちばんの場所は、それぞれの学校の学内です。さらにその学内を超えて、ブロックや地区を形成し、学生たちの主体的な交わりを委員会によって作り上げています。さらに全国的には、全国学生協議委員会を開催します。年に2回会議を持って、それぞれ学内活動をどうしていくか、地区の活動をどうやっていくかを全部、学生たちが決めています。主事たちはその会議に寄り添いながら、学生たちが知らない先輩たちがやってきたことや、もっとできそうなことをアドバイスしていきます。そういったことを大切にしてきたということが、これまでのKGKの歴史を作ってきたのだと思っています。

日本全国で学生たちを支えるKGKの主事たち

──「主事」はいつ頃から生まれたのでしょうか。

大嶋:学生は長く続けても8年ぐらいしか大学にいられません。自分たちが卒業したら、後輩が学内の聖書研究会や祈り会を続けていけるか心配したのです。それで卒業生たちが学生のための働き人を立てました。これが主事です。そして、主事の人件費に当たるような献金が卒業生によってささげられ、第1号の主事が立てられました。その後、この働きを諸教会が応援してくださるようになり、教会からの献金と卒業生からの献金が現在、1億2000万円ささげられて、全体で34人の主事が立てられています。

──総主事の立場から見て、KGKの主事はどのようなタイプだと思われますか。

大嶋:主事は明るくほがらかに学生をリードするという側面もありますが、むしろ学生に「こんなことやる意味があるのか」、「なぜそれをやりたいのか」、「その動機は御言葉からなのか、それとも自己実現なのか」などと鋭く問いかけるのが主事の持ち味だと思います。その一方で、学生が失敗をした時にはとことん付き合うことを大切にするのも主事です。「失敗に付き合うこと」は、若い世代を育成するのに大切なことです。もし失敗できない空気がキリスト教会の中にあったとしたら、安心して失敗させてくれる場所がKGKなのだと思います。私は今期で総主事を引退し、来年4月からは矢島が総主事となります。吉澤は引き続き副総主事として活動しますが、私はこれからは支援者としてKGKを支えていきます。

副総主事の吉澤慎也さん

──皆さんがKGKで活動していた頃と、今の学生たちに違いはありますか。

吉澤:学校の生活自体が忙しいということですね。大学自体も少子化が進み、経営が厳しくなる中で、就職率を上げて入学者を獲得しようと必死ですから、授業のほかにも短期留学や企業のインターンに行かせるなど、私の頃にはなかったことを今の学生はこなさなければなりません。そのような忙しい中では、聖書をじっくり読んで神様と向かい合うことができにくくなっているのかもしれません。「何のために私は生きているのか」、「人生の目的とは何だろう」と考える余裕もないくらい、勉強やアルバイトをしなければならない。そうすると、本来人間が考えなければいけない、悩まなければいけない発達課題みたいなものが、もしかしたらその時代に問われないで先送りされてしまっている人が増えているのかもしれません。

副総主事の矢島志朗さん

──希望はどういうところに感じられますか。

吉澤:今の学生たちは、いろいろなことを上手にこなします。楽器をはじめ、メディアを使っての動画作りなど、発想が素晴らしい。そういったところで学生の若さや想像力が発揮されるのは、見ていてすごく楽しいですね。

矢島:器用なところは良い面だと思う一方で、世の中に対する見方が前向きになれない学生が多いように思います。私は卒業してから10年以上経ってKGKの現場に戻ったのですが、学生たちが以前よりおとなしくて幼く見えました。昔のイメージだと、自分たちで主体的にやる意識が強い学生が多くいたのですが、そういう人たちがあまり見受けられないなという印象を最初は持ったのです。

ただ、KGKでの交わりや、聖書に主体的に向かう部分で訓練されると、どんどん変わっていくんですね。そうなると、昔と変わらないどころか、すでに持っているアドバンテージ(長所)があるので、さらにいい働きをするなと思います。芽が出るまでは、時代の負の影響が見受けられるのですが、KGKはそういうものを超えていける場所だと思います。(3に続く)

 






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