神さまが共におられる神秘(63)稲川圭三

神さまの前に豊かになる

2016年7月31日 年間第18主日
(典礼歴C年に合わせ3年前の説教の再録)
お前が用意した物は、いったいだれのものになるのか
ルカ12:13~21

イエスさまは、「有り余るほど物を持っていても、人の命は財産によってどうすることもできない」と言われます(ルカ12:15)。

ここで言う「命」とは、「永遠のいのち」のことです。「有り余るほど物を持っている」ことが、その人の「永遠のいのち」を保証することには全然ならないという話です。自分のために財産の蓄えをしても、死んでしまったら自分のものにはならない。一生懸命、自分のために蓄えた財産は、死んでしまえば、もう持っていくことができない。だから、そういうところに財産を貯めるのではなく、神さまの前に豊かになる。神さまの前に財産を貯めるべきだ。端的にはこういう話です。

でも、このシンプルなメッセージが、複雑な社会に生きている私たちにはすっと伝わりづらいのかもしれません。

今日の福音を通して言われているイエスさまからの最も強い望みは、私たちが「神さまの前に豊かになる」ということです。そこで今日は、「神さまの前に豊かになる」とはどういうことか考えてみたいと思います。

「永遠のいのち」とは、死んだ後に初めてもらえるようなものではなく、今日すでに持たせてもらう「いのち」です。今日すでに、永遠のいのちの神さまがつながってくださっているということを受け入れて生きることです。

でも、そのことが私たちにはよく分からないので、「永遠のいのちを持つとはこういうことだよ」と、私たちに分かるように与えていただいた「しるし」がイエスさまです。イエスさまを見ると、「ああ、永遠のいのちを持つとはこういうことなのだな」、「永遠のいのちを持って生きるとはこういうことなのだな」と分からせていただくということです。

イエスさまは「永遠のいのち」を持っておられたので、自分の中にも人の中にも神さまが一緒にいて生きておられることをご存じでした。そして、そのことを何とかして伝え、すべての人に出会わせるために、ご自分の「いのち」と時間とお金(イエスさまはそんなに持っておられた雰囲気はありませんが)と労力とをお使いになったのです。

だから、私たちもイエスさまの弟子として、目の前にいる人の中に「神さまが一緒にいてくださる」ということを伝えるために、私たちの「思い」や「言葉」や「お金」や「時間」を使うことが「神の前に豊かになる」ということ。そしてそれが「永遠のいのちを持つ」ということなのだろうと思います。

人間の中には神さまがおられます。自分が苦手とする人の中にも神さまがおられます。だから、その神さまの真実を認めるために使う「心」、使う「時間」、注ぐ「祈り」、その神さまのために使う「労力」、使う「お金」が、神の前に豊かになる、神さまのところに財産を貯めるということなのではないでしょうか。

今日のたとえ話で、自分のために貯めた富は、死んだら何の役にも立たなかったのです。でも一方、誰かのために、誰かの中にいてくださる神さまのために「使った時間」、「流した涙」、「注がれた労力」、そのために「払ったお金」は決してなくならないと言っていいでしょう。神さまの前に蓄えた富は、決して滅びることなく、死を超えて、自分から離れることがないのです。

イエスさまはどこに自分の財産を貯めていたかといったら、みんな人のところに、人と共におられる神さまのところに貯めておられたのではないかな。そのお方が今日私たちと一緒にいてくださるので、そのお方と私たちも一緒の向きで生きる時、私たちは「弟子」とされるのだと思います。

先週ある青年が、重い障害を持った方々を大勢殺し、傷つけてしまうという痛ましい事件がありました(相模原障害者施設殺傷事件)。ですが、自分の気に入らない人の中にまず神の「いのち」を見いだすよりも、気に入らない外側でとどまって、共にいてくださる神さまの真実を2番や3番に追いやってしまうということは、私たちにもたくさんあります。

今回の事件を起こした人のために「祈る」とは、私にとっては、どういう時にも、その人の中に神さまが一緒にいてくださるという真実への祈りを1番にするということと一つのことなのかなと考えます。

人間の中には神さまの「いのち」があります。人間は、神さまが一緒にいてくださる尊い「いのち」です。だから、そのことを受け取らせていただいて生きなければならないのです。

今日も、人間の中に神さまの「いのち」があるという真実に出会わせるために神さまがお立てになった主キリストが、私たち一人ひとりと共にいてくださいます。だから、そのお方と一緒に私たちも、自分の身のまわりの一人ひとりの中に神さまの「いのち」を認める第1番の祈りを祈る者になりますように、ご一緒にお祈りをしたいと思います。

 






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