神さまが共におられる神秘(12)稲川圭三

 

耐えがたい人生をキリストと共に生きるために「食べよ」

2015年8月9日 年間第19主日
(典礼歴B年に合わせ3年前の説教の再録)
わたしは天から降ってきた生きたパンである
ヨハネ6章41~51節

説 教

ヨハネの福音書は6章全体を通して、イエスさまがパンを食べさせた出来事の意味を私たちに教えようとしています。そして、そのことを通して「ミサ」の意味を教えようとしているのです。

イエスさまは5000人の人にパンを食べさせました。しかし、実はイエスさまは、後にすべての人にご自分のいのちを食べさせることになると知っておられました。

今日も全世界で行われているミサを通して、イエスさまはご自分の体を私たちに食べさせます。永遠のいのちを私たちに得させるためです。

今日の第一朗読で、主の御使いはエリヤに向かってこう言いました。「起きて食べよ。この旅は長く、あなたには耐え難いからだ」(列王上19:7)。そして、エリヤにパンを食べさせ、また水を飲ませました。

イエスさまはこの同じ思いをもって、今日も私たちに食べさせようとしておられます。私たちのいのちと人生は、神さまが一緒にいてくださる生涯です。しかし、そのことに出会わないままで生きるならば、私たちには耐えがたい。途中で倒れてしまうかもしれない。そうであってはならないので、イエスさまはパンを食べさせたのです。

でも、本当にイエスさまが食べさせたいとお望みになったパンとは、食べてなくなってしまうパンではなく、決してなくなってしまうことのない「ご自分のいのち」というパンでした。「わたしは、天から降って来た生きたパンである。このパンを食べるならば、その人は永遠に生きる」(ヨハネ6:51)。そう言われました。

「生きる」とは何でしょうか。それは、神さまが一緒に生きてくださっていることを知り、そのことに出会って、一緒の向きで生きることです。

父である神のもとから来たイエスさまは、神さまと一緒に生きておられ、また、すべての人の中に神さまのいのちがあることを見て生きた方でした。その同じ眼差しと出会いを与えたい。それがイエスさまのお望みでした。

このお方のいのちのパンを食べるならば、このお方が私たちの中で一緒の向きで生きてくださるいのちになります。私たちもそのお方と一緒の向きで生きるいのちになるなら、お互いの中に神さまが共にいてくださる真実を見て歩むいのちになっていきます。そのためにこそ、私たちはパンを食べさせていただきます。

今日ここで、キリストの体であるご聖体をいただく者は、聖体拝領の時、司祭から「キリストの御体」と言われてパンを差し出され、「アーメン」と言ってそれを受けます。その時、キリストご自身はこう言われているのです。

「これは私の体。私は食べられて、あなたと一緒の向きで生きるいのちになる。あなたは私を食べて、私と一緒の向きで生きるいのちになる。そのいのちの交わりに入るけれど、いいか」

それに「はい」と答えて、キリストとのいのちの交わりにあずかる。これが「キリストの体をいただく」という出来事の意味です。

いただくパンは、私たちのお守りのようなものではありません。キリストが私の向きで生き、私もキリストの向きで生きる。その交わりに入るということです。

「その交わりに入るが、いいか」と聞かれています。「はい」「アーメン」と答えて、その交わりにあずかるならば、自分の内でキリストが生きてくださり、また私もキリストのうちに一緒に生きるいのちになります。「キリストによって、キリストと共に、キリストの内に」とはそのことを言っているのだと思います。

キリストは、信じる私たち一人ひとりの中に、掛け値なしに一緒にいてくださるお方です。ですから必要なことは、そのことを受け取らせていただいて、キリストの器として生きることだけです。もちろん、器としての出来は悪いけれども、内にいてくださるキリストの素晴らしさは器の出来の悪さを凌駕(りょうが)する、まったく比較になどならない尊い真実です。だから私は、自分の器の出来の悪さにではなく、その内にいてくださるお方の真実に信頼します。私たちも、共にいてくださる神さまの真実に信頼を置いて生きるいのちになりましょう。

また、ここには「自分もいつかは洗礼を」とお考えになっておられる方もおいででしょう。「キリストのパンをいただいて、私も一緒に生きさせてもらいたい」という望みを持っておられる方もおられるでしょう。そのお方もご心配には及びません。あなたが「キリストと共に生きたい」と望むその時、もうすでに永遠のいのちをいただいているからです。

「はっきり言っておく。信じる者は永遠のいのちを得ている」とイエスさまがおっしゃいます。「得ている」とは、まさに「今日」の「今」のことをおっしゃっているのです。このキリストの言葉に信頼して、ご一緒にこの感謝の祭儀をおささげいたしましょう。

 






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