翻訳の意義──聖書はどう読まれるべきか 渡部信氏による講演会

 

「新翻訳の意義──聖書はどう読まれるべきか」と題して、日本聖書協会総主事の渡部信氏による講演会が9月23日、日本基督教団・横須賀小川町教会で開催された。これは同教団と東湘南地区に属する17教会の共催で毎年行われる信徒大会で、今年は28回目を迎える。昨年12月、「新共同訳」に代わる礼拝用聖書「聖書協会共同訳」が刊行されたばかりで関心も高く、講演後には多くの意見や質問が出された。

講演の前半では、新しい聖書の翻訳方法について語られた。礼拝に使われるための聖書という目的を明確にして翻訳する「スコポス理論」が導入され、また翻訳者62人のうち日本語担当者が19人(30%)、編集委員や検討委員、外部モニターなど合計148人のうち女性委員が34人(23%)も参加したことにより、女性の意見も反映され、日本語として読みやすく、文脈を重んじた理解しやすい翻訳になったと渡部氏は説明した。

さらに、聖書協会世界連盟が開発した「パラテキスト」と呼ばれる翻訳ソフトを用いてすべての翻訳作業がなされたことも紹介された。いつでも、どこでも、あらゆる言語の聖書データを自由に引き出すことができ、複数の人間が同時に翻訳作業することを可能とするものだ。こうしたIT技術の力によって、わずか8年間で翻訳を完成することができたという。

後半は、いくつかの翻訳の実例が紹介された。「キリストの真実」と訳された経緯や、「ツアラート」を「規定の病」とした背景、コヘレト書における「空」の理解についてなどだ。その上で、「翻訳に関わる多くの選択は、スコポス理論に沿って、内容に沿った翻訳文を目指したもの」と語られた。

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