映画「名もなき生涯」 戦争で信仰を貫いたクリスチャン夫婦の実話(読者プレゼントも)

第二次世界大戦中、ナチスに抵抗したカトリックのクリスチャン夫婦の葛藤と愛を描いた伝記映画「名もなき生涯」(テレンス・マリック監督)が2月11日よりロードショー公開される。第72回カンヌ国際映画祭エキュメニカル審査員賞受賞作だ。

©2019 Twentieth Century Fox

オーストリアの山と谷に囲まれた美しい村で幸せに暮らす農夫のフランツと妻のファニ、そして3人の娘のもとに召集令状が届く。フランツはすぐにドイツ国防軍駐屯地に出頭するが、クリスチャンとして良心的兵役拒否を宣言。また、ヒトラーへの忠誠を誓う署名を頑(かたく)なに拒んだため、ただちに逮捕され、軍事拘留刑務所に拘留される。

政府や軍に脅されても、また村の神父から「祖国への義務を果たすことが教会の教え」と説得されても、なぜフランツは最後まで自分の信念を貫いたのか。人々からも、「家族の安全を考え、家族のために戦争に行くべきだ」と言われ、フランツは「愛する家族のために信念を曲げるべきではないか」と迷うものの、一方で「自らの保身のためなら、他人の家族は殺してもいいのか」と迷う。

他国を攻撃し、弱者を食いものにするナチスのやり方。子どもでも分かる国家の間違いに「ノー」と言うことで引き起こされる悲劇。不条理な現実と四面楚歌(しめんそか)の中でフランツはやがて、「神から自由意志をさずかったのならば、自分の行動に責任を持たなくては」と考えるようになる。

「名もなき生涯」チラシ表

こうして、まわりから非国民と責められ、孤独に耐えながら裁判を待つフランツを、妻ファニは手紙で優しく励ます。しかし、彼女自身も村で「裏切り者の妻」としてひどい仕打ちを受けていた。

ファニは、フランツの良心に反することなく命を救う道を探り、折にふれて彼を力づける。そこには、神への大きな信頼と同時に、「夫が自分を不憫(ふびん)に思って考えを変えてくれるかもしれない」という小さな期待を持ち続けていることも記されており、その人間らしい矛盾に胸が締めつけられる。この収監中にフランツとファニがやりとりした手紙は、当時、実際に交わされた書簡が使われているという。

神の存在すら身近に感じさせる、あまりにも美しい光と風景の中で、フランツとファニの愛に満ちた胸を震わす書簡をひもときながら、人間の真実と尊厳に迫っていく。

若者たちの葛藤を描いた「天国の日々」(1978年)、太平洋戦争におけるガダルカナル島の戦いを舞台にした「シン・レッド・ライン」(98年)、父親と息子の確執を振り返る「ツリー・オブ・ライフ」(2011年)など、常に話題作を発表し、圧倒的なまでの美しい映像で数々の映画賞を手にしてきた名匠テレンス・マリック監督の最新作だ。

フランツを演じるのは、「ヒトラーの偽札」(09年)でユダヤ人印刷工を演じたアウグスト・ディール。マリック監督のたっての希望で主演を務め、その強い眼差しにより、戦争への憤りを表現する。妻ファニ(フランチスカ)には、「エゴン・シーレ──死と乙女」(16年)で「運命のミューズ」として多くの絵のモデルとなったヴァリ役を務めたヴァレリー・パフナー。そして、「ヒトラー──最期の12日間」でヒトラーに扮し、この作品が遺作となったブルーノ・ガンツが判事役で出演している。

「名もなき生涯」チラシ裏

同作のプロデューサーを務めたグラント・ヒルは、次のように話す。

「驚くべき不屈の愛の物語だ。群集心理や、人が何かに駆り立てられる根源を掘り下げ、信念と良心のために限界まで奮闘する姿を描き出し、『大義名分があれば善人を傷つけてもいいのか』と厳しく問いかける。つまり、これはいつの時代にも当てはまる献身と愛と寛容の壮大な物語だ」

フランツは結局、死刑判決を受け、36歳で処刑されるが、2007年、前教皇のベネディクト16世により殉教者と認定され、列福された。

映画「名もなき生涯」(原題「A Hidden Life」)公式ホームページ

※ポスター、チラシ、チケットのお問い合わせは、お近くのキリスト教書店へ。また教会用チラシは、上の画像をダウンロードすることが可能。

【読者プレゼント】
公開に先立ち、特別試写会に5組10名様をご招待します。試写会は2月4日(火)午後6時半(6時開場)、ニッショーホール(東京都港区虎ノ門2─9─16 日本消防会館)で行われます。応募締め切りは1月28日(火)まで。応募は、氏名と住所を明記の上、ホームページのいちばん下にある「お問い合わせ」からメールをお送りください。当選者発表はチケットの発送をもって代えさせていただきます。当選に関するお問い合わせにはお答えすることはできません。

 






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