後継者は70代! 島 しづ子 【夕暮れに、なお光あり】

私は2020年4月に沖縄県のうふざと伝道所に赴任しました。教会の仕事の一つとして新基地建設が進められている辺野古・大浦湾に毎週通っています。新基地建設に抗議する現場は数か所あります。私は海上抗議行動に参加し、2020年6月から抗議船に乗せてもらっています。参加当初はベテラン船長が操船する船の上で助手をしていました。早朝から午後まで、1日数時間乗って、船長の下働き、カヌーのサポート、工事の監視をします。

しかしコロナ禍になり、海上抗議行動を担うために沖縄県外から通って来ていたボランティアが来られなくなりました。そのために、「島さんも操船免許取りなさい」としきりに勧められるようになりました。馬耳東風でいましたが、助手であってもいざという時に操船できなければいけないということに気づき、操船免許を73歳でとりました。現場では年下の先輩たちが操船を教えてくれ、次第に火急の時でない場合はまあまあ操船できるようになりました。

辺野古では、操船免許を持っているだけでは「船長」と呼ばれません。船長は船を運ぶ台車の牽引、船の出し入れ、その日の行動の全責任(気象・海況の判断、抗議活動の現場判断、海上保安官総括との交渉)を担います。なので、私は「永遠の船長見習い」を自負(?)しています。そんな立場の者もいないと、海上行動ができないくらい、人手が足りません。足りないからこそ、私の活躍の場もあるのです。

船長見習いKさんは70歳。私の半年後に操船免許を取った船長見習いYさんは73歳。Kさんが3人そろった写真を知人に見せたら大笑いされたそうです。「まあ、いい年して」と。自分でもそう思います。

ある日のこと、他の有力な船長も不在で、Yさんと私だけでゴムボートを出してはどうかという話になりました。2人とも自信がなかったので、「えー! 私たちだけでですか? Yさん、無理ですよね?」と私は言いました。Yさんもうなづきました。すると、事務局長が言いました。「いや、早く後を継いでもらいたいのですよね!」私は言いました。「事務局長、私たち73歳です。もっと若い人に受け継いでもらってくださいよ!」辺りを見渡すと、40代1人、50代1人。あとは70代ばかり。73歳にして誰かの後継者になるとは、想像もできませんでした。

「『神は言われる。/終わりの日に/私は、すべての肉なる者にわが霊を注ぐ。/あなたがたの息子や娘は預言し/若者は幻を見、老人は夢を見る』」(使徒言行録2章17節)

 

しま・しづこ 1948年長野県生まれ。農村伝道神学校卒業。2009年度愛知県弁護士会人権賞受賞。日本基督教団うふざと伝道所牧師。著書に『あたたかいまなざし――イエスに出会った女性達』『イエスのまなざし――福音は地の果てまで』『尊敬のまなざし』(いずれも燦葉出版社)。

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