第47回 日本カトリック映画賞決定! 『桜色の風が咲く』松本准平 監督 /2022年作品

シグニスジャパン(SIGNIS JAPAN=カトリックメディア協議会、会長:土屋至)は9日、2022年度の「日本カトリック映画賞」を、松本准平監督の『桜色の風が咲く』(2022年製作、配給:ギャガ)に決定したことを発表した。また、第2回シグニス平和賞には、医師・ 中村哲さんの現地活動35年の軌跡を追ったドキュメンタリー『劇場版 荒野に希望の灯をともす』(監督/撮影:谷津賢二)が選ばれた。

日本カトリック映画賞は、前々年の12月から前年の11月までに公開された日本映画の中で、カトリックの精神に合致する普遍的なテーマを描いた優秀な映画の監督に毎年贈られる。昨年は、『梅切らぬバカ」の和島香太郎監督が受賞した。一方、シグニス平和賞は、平和へのメッセージとなりうる作品を選んで贈られるもので、今回は、『石川文洋を旅する』(2014 年 大宮浩一監督)に続いて2回目となる。

映画『桜色の風が咲く』は、世界で初めて盲ろう者の大学教授となった東京大学先端科学技術研究センター教授・福島智さんと、母・令子さんの実話をもとに「生きる希望」を描き出す、真摯で温かな人間ドラマ。小雪が母・令子役で12年ぶり映画主演を務め、気鋭の若手俳優・田中偉登が青年期の智を演じる。

監督の松本准平氏は、長崎県西彼杵郡生まれ。カトリックの家庭に育ち、自身もカトリック教会で洗礼を受けている。これまで愛、家族、罪、生などをテーマに『最後の命』(14)や『パーフェクト・レボリューション』(17)など話題作を世に送り出してきた。前作に引き続き今作でも、障害というテーマに取り組んだ松本監督。映画制作を通じて、障害というものは、「いわゆる社会が分類する『障害者』に特有の何かではない」と考えていることを同作品公式サイトで語っている。

1月に行われたカトリック映画賞選考で同作品は、満場一致で映画賞に選ばれた。その受賞理由についてシグニスジャパン顧問司祭・晴佐久昌英氏は次のように話す。

映画は光と音でつくられている。したがって、その両方を失った人物を主人公にした作品を作ることは、映画作家にとっては究極のチャレンジになるはずだ。光と音のない世界を生きる人間の真実を光と音を用いて表現するとはどういうことなのか。
松本准平監督はこれまでも、もっとも困難な状況にある人間を描いてきた。そこにはなおも救いがあり、映画はその 救いを語りうると信じているからだ。その監督が今回、目に見えない光を撮ってくれたことに感謝したい。

体の苦痛も心の苦痛も、誰かとつながっていれば耐えられる。であれば、だれともつながれない孤独こそは、最大の苦痛であろう。現代人が抱える苦悩の本質は、そこにある。目が見えていても、耳が聞こえていても、誰ともつながっていないという孤独。しかし見よ、闇と無音の虚空に放り出された者に、母の手が触れてくる。指でことばを伝 えてくる。人間にとって最も大切なもの、すなわちぬくもりのあることばを肌で聞くという、信じがたく美しい瞬間!実はそれは、映画そのものの美しさと深い関わりがある。観客もまた、映画館の暗闇の中に孤独で座っているのだから。

いつだって救いは、向こうからくる。神の愛の現れであるキリストが自らを「神の指」になぞられたように、愛す るわが子に触れる母の指はそのまま神の指なのだ。この映画自体もまた、絶望の世紀を生きる多くの人の心に直接触れてくることだろう。「映画は人を救えるか」という監督自身の祈りにも似た問いに、日本カトリック映画賞をもって答えたいと思う。

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