聖書に登場する「デビル」は悪魔ではない【聖書からよもやま話396】

主の御名をあがめます。

皆様いかがおすごしでしょうか。MAROです。
本日もクリプレにお越しいただきありがとうございます。

聖書のランダムに選ばれた章から思い浮かんだよもやま話をしようという【聖書からよもやま話】、今日は旧約聖書、ヨシュア記の15章です。よろしくどうぞ。

ヨシュア記 15章15節

そして彼は、そこからデビルの住民のところに攻め上った。デビルの名は、かつてはキルヤテ・セフェルであった。
(『聖書 新改訳2017』新日本聖書刊行会)

カレブという人がデビルを攻めた、と書いてあるのですが、この「デビル」というのは単なる名前であって、僕たちがつい「デビル」という言葉から連想してしまう「悪魔」とは無関係なようです。この「デビルの住民」が悪い人たちだったので、そこから派生して悪魔が「デビル」と呼ばれるようになった・・・ということもありません。というのも、人が悪魔を「デビル」と呼ぶようになったのは、もっとずーっと後の時代のことだからで、ヨシュア記が著された時代にはまだ「悪魔」という意味の「デビル」という言葉は存在していないからです。

「デビル」というのは英語では「Devil」ですが、この語源は古代ギリシャ語の「Diaballo」で、ざっと言えば「争う人・中傷する人」という意味です。これが名詞形になると「Diabolos」ですが「ディアボロス」と言えば各種ファンタジーなんかで時々聞く名前ですよね。ここから「Diabolos → Diabolus → Diobul → Deofol → Devel → Devil」と変化して僕たちにも馴染みのある「デビル」になったのだそうです。それもこれは英語だけの話で、たとえば現代でもフランス語では「Diable」ですし、イタリア語では「Diavolo」、スペイン語では「Demonio」です。ちなみにスペイン語で「Debil」というと、これはもうまったく違う意味になりまして「弱い」という形容詞だそうです。

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Image by Penny from Pixabay

こうして語源を辿ってみると面白いのはデビルはもともと「争う人・中傷する人」であったということです。人と人との間に敵対関係を作り出したり、その敵を誹謗中傷したりする、それが悪魔的行為だということです。現代社会は分断と誹謗中傷に満ち溢れていますけれど、これはまさに悪魔的社会であるということになります。悪魔というのは神様に敵対する者ですから、分断や誹謗中傷というのは神様に逆らう行為だということでもあります。これらは神様の御心から最も離れた行為の一つだと言えます。ですから神様は僕たち人間のそんな姿をみて悲しんでいることと思います。

分断というのは「私は正しい」という心から生じるものです。しかし聖書には書いてあります。「義人はいない。一人もいない」と。つまり「人は誰も正しくない」ということです。この気持ちを一人一人が忘れなければ、分断と誹謗中傷の世界は終わるのかもしれません。とはいえ人間はどうしても「私は正しい」と思いたがってしまうものですし、もしかしたらそう思っていなければ生きられないのかもしれません。なるほど、これが生まれ持った原罪か・・・なんてことをしみじみ考えてしまいます。

それではまた。

主にありて。
MAROでした。

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横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

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