新型コロナウイルスが社会にもたらした影響は、学生たちにも及んでいる。大学では秋学期が始まり、徐々に対面での授業が増えているというが、先日も都内の大学でクラスターが発生しており、予断を許さない状況だ。また、オンライン授業の導入や、家計が苦しくなり、困窮する家庭に向けた緊急奨学金や学費延納制度の設立など、各大学も対策に追われている。
現役の大学生は今、何を感じているのだろうか。明治学院大学3年社会学科の松島基紀さんに話を聞いた。
――緊急事態宣言が出ていた春学期は、どのように授業を受けていましたか?
「4月1日から始まるはずだった授業が延期になり、4月中旬からオンライン授業がスタートしました」
――かなり早い段階でオンライン授業を導入されたんですね。具体的に授業はどんな風に進められたのでしょう?
「確かに、他の大学と比べると早かったと思います。授業の進め方はzoom(ビデオ会議システム)を活用したり、動画を見て期限までに課題を提出するもの、レジュメをもとにレポートを提出するものなど、教授によってまちまちです」
――学生の皆さんはオンライン授業を受ける準備が整っていたのでしょうか?
「僕はもともとPCを持っていたので問題なかったのですが、1年生や自宅にPCがなかったり、ネット環境が整っていない生徒は大変だったと思います。学生たちが署名活動を行ったこともあって、5月頃には大学から学生ひとりにつき5万円が給付されました」
――春学期は一度も大学には行かなかったのですか?
「ええ、学期のはじめに手続きで行ったくらいですね。その後は学校自体、立ち入り禁止になってしまったので。友達とはzoomを使って頻繁にやりとりしていました」
――学校に行けない期間は、どんな気持ちでしたか?
「僕自身は実家暮らしということもあって、そんなにしんどくはなかったんです。むしろ通学時間がなくなり、時間に融通ができて良い部分もありました。ただ、低学年や一人暮らしをしている生徒からは、不安だという声も多かったです。まず1年生は、先輩に授業の組み方を教わることが多いのですが、それもできません。地方から出てきている子は実家に帰りたくても帰れないし、中には入学してからまだ上京できていないという子もいます。新しい人間関係が構築しにくかったり、就職活動をしている友人は、オンラインでインターンに参加してみたものの、イメージが掴みにくいとも言っていました」
――それぞれが置かれている環境によって、かなり状況が違いますね。
「本当にそうですね。僕はとても恵まれた環境にいるので、感謝しています。秋学期が始まってからも、僕は週に1度だけ大学に通って、それ以外はオンライン授業が続いているのですが、学科によっては週5回通っているという人もいます」
――コロナ禍の中で最も大変だったことは?
「オンライン上でのやりとりです。こんなに長時間、オンラインでやりとりしたことがなかったので・・・。zoomは大人数でも活用できるのがメリットですが、人数が増えるとコミュニケーションがうまく取れなかったり、授業が終わると画面がパッと変わって、大学にいるときのように友達と何気ないおしゃべりをすることもないから余韻がなくて。初めはみんなぎこちなくて、悪戦苦闘していました。慣れるために、ただ喋るだけの時間を作ろうと目的を定めずにオンラインにつないだりしていました」
――逆に、良かったことはありますか?
「実は、これもオンライン上のやりとりなんです。コロナ以降、サークルがほとんど活動できない中で、僕の入っている聖書研究会は、オンラインを通して活動を続けることができました。所属しているKGK(キリスト者学生会)の活動も、全国の学生たちとの交流が盛んになりましたし、オンラインキャンプも開催されたんですよ」
――オンラインキャンプ! 新しいアイデアですね。改めて振り返ると、悪いことばかりではなかったということでしょうか。
「世界中に被害が広がり、悪いことのほうが多いのですが、得たこともあったと思います。僕の好きな聖書の言葉に「人の心には多くの思いがある。しかし主の計画こそが実現する」(箴言19:21)とあるのですが、コロナを通して、改めてこの言葉通りだなと感じています。今は世界中の人にとって辛く、大変な時期ではありますが、このままでは終わらせない神様の計画があるのだと思います」
コロナ以降、社会全体でオンラインによる交流が活発化し、多くの教会でもオンラインによる礼拝や祈祷会が行われているが、今後もこの文化は発展していくだろうと語る松島さん。
「オンラインの発達によって、色々な面で物理的な距離と、“チラ見”のハードルが下がったと感じています。個人的には、“オンライン”を神様が与えてくださった手段として大いに用いながら、もっと全国的な交わりや、教団・教派を超えたかかわりができるようになっていくといいなと思います」