息子に「地元」をつくりたい――アドバイザーの想い 清元由美子 【「親なきあと」をともに生きる~お寺と教会の〈語らい〉から始まる支援】

私が「親あるあいだの語らいカフェ」に初めて参加してから3年、アドバイザーとして活動するようになって2年が経ちました。自閉症と重度の知的障害がある息子が30歳を過ぎ、親なきあとについて福祉とつながっていれば生活に困ることはないかもしれないけれど、それで息子は楽しく暮らせるだろうかと考えるようになったことがきっかけでした。

息子が子どものころは、障害者の家族が集まって作業所やグループホームを立ち上げ、行政の補助を受けながら運営する所が出始めていました。ですが、その後景気が悪くなると補助が削られ、これまでのように運営が続けられなくなったり、また障害者の処遇は「措置」(行政が決める)から「契約」(自分で選ぶ)へと変わったりするなど、社会や制度がどんどん変わっていくのを見てきました。

現在は多くの福祉サービスが民間に任せられるようになり、行政は障害があっても地域で暮らし続けるという方向で進めていますが、そのために必要な施設や支援者は全く足りておらず、息子が親なきあとに直面した時、それらが整っているという保証はありません。それならば、自宅で支援を受けながら暮らし続ける道を探ってみようと思いました。

息子は、保育所、小・中学校と地域の学校に通い、支援学校高等部も徒歩で通っていました。小さいころから、一緒に電車で出かけていたので、今は一人で電車とバスに乗って就労支援施設へ行き、自宅周辺であれば外出できるようになりました。

また支援学校を卒業してからは、ヘルパーさんに自宅に来てもらい、買い物や調理、掃除、洗濯の練習をしてきました。今では自宅でなら私がいなくても、数日は暮らせるだろうと思います。

それではあと何があったら、この先息子が一人で10年、20年暮らしていけるでしょうか。

それは困った時に助けを求めることと、それに応じてもらえることではないかと考えました。制度が変わっても、近所に住む人たちが息子のことを知っていて気にかけてくれたら、どんなに心強いかと思いました。

残念なことに、この地域は住人同士のつながりが強いとは言えず、それならまず、自宅を近所の人に来てもらえるような場所にしようと考えました。私が本好きなので、家庭文庫なら費用もさほどかからず、届け出や許可もいりません。こうして2023年12月に家庭文庫「はんぶんぶんこ」を始めました。

私の取り組みを知って、思いがけず多くの人が応援してくれました。そのことに力を得て続けるうちに、近所の人たちが少しずつ来てくれるようになり、今では息子が通っていた小学校の子どもたちが大勢来て遊んでいくようになりました。子どもが来ればその親御さんが見に来ることもあり、開いている日は通りがかった人も何だろうかとのぞいていきます。息子のことを知ってくれる人も増え、「この前道で会ったよ」と教えてくれることもあります。

「語らいカフェ」に参加して、場所があって、迎えてくれる人がいることで、人が集まりコミュニティーができるということを感じていていましたが、家庭文庫でも同じようなことができるのだと実感しています。そういう点では、教会も同じではないかと思います。

街にそのような場所が増えたなら、息子のような障害者も、誰でも安心して暮らしていけるのではないでしょうか。家庭文庫を始めたことで、そんな未来が思い描けるようになってきました。

きよもと・ゆみこ 一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室アドバイザー。はんぶんぶんこ主宰。自閉症の長男(34)と次男(32)の母。管理栄養士。

*問い合わせは同相談室(https://otera-oyanaki.com/)まで。

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