わたしのために、わたしと一緒に神に熱心に祈ってください。(ローマの信徒への手紙15章30節)
パウロはローマ教会の信徒たちに自分の伝道計画を伝え、「あなたがたに会い、...共にいる喜びを味わってから、イスパニアへ向けて送り出してもらいたい」(24節)という希望を伝えた。ここに教会の交わりを大切に思うパウロの姿がある。
しかし、ローマに行く前に、パウロは諸教会から集めた献金をエルサレム教会に持って行かねばならなかった。そのエルサレムでは大変な危険が予想された。回心してキリスト教の伝道者となったパウロを、ユダヤ人に対する裏切り行為と見なし、彼の命を狙う者たちがいたからである。また、エルサレム教会にも、異邦人を見下すユダヤ人キリスト者がいたので、異邦人から集めた献金が拒絶されるかもしれない不安もあった。
このような恐れと不安があったので、パウロはローマ教会の兄弟たちに、「わたしがユダヤにいる不信の者たちから守られ、エルサレムに対するわたしの奉仕が聖なる者たちに歓迎されるように」(31節) 祈ってくださいと、今日の聖句のように願ったのである。しばしば危険な立場に置かれたパウロにとって、恐れと不安を乗り越える道は神への祈りであった。彼が祈りを重んじるのは、自分の願いを実現するためではなく、祈りを聞いて、御心(みこころ)をなさるのは神であると信じていたからである。それゆえ、パウロは熱心に祈るとともに、兄弟たちにも祈りの応援を求めた。パウロにとって、一緒に祈ってくれる兄姉の存在は大きな励ましであった。パウロが自分の働きや計画を語り、また、不安や恐れを隠さないで、兄姉たちに「祈ってください」と率直に言えたのも、教会の交わりを信じたからである。教会の交わりは、祈りによって固く結ばれる。