聖書の登場人物には苗字がありません。でも日本だってなかったんです。 

おはようございます。
今日もクリスチャンプレスをご覧いただきありがとうございます。

◆1875年2月13日 平民苗字必称義務令が布告された日

「イエス・キリスト」の「キリスト」部分を「イエス様の苗字でしょ」と思っている方は意外と少なくありません。しかしこれは苗字ではなく「救い主」という意味で、つまり「イエス・キリスト」というのは「救い主イエス」という意味です。ではイエス様の苗字は何といったのかというと、そもそもイエス様には苗字がなかったんです。イエス様だけでなく、当時のイスラエル地方の人々はほとんど苗字を持っていませんでした。それで「ナザレのイエス」のように出身地名や、「アルパヨの子ヤコブ」のように父親の名前を苗字のように使って同名の人を区別していました。

それはなんと不便な・・・と思われるかもしれませんが、日本でも実は江戸時代まで、苗字を持っているのは公家と武家の支配階級だけでした。商人、農民といった人々は苗字を持っていなかったんです。人口の9割は苗字を持っていなかったことになります。しかし、明治維新により身分制度の改革が起こり、支配階級であった「華族・士族」だけでなく、「平民」にも「苗字を持っていいよ」という法律が1870年にできました。しかし「いや、俺はそんなもの要らない」という人も多く、みんなが苗字を持つには至りませんでした。しかしそれだと戸籍の管理などで困ってしまうので「みんな苗字を持たなければダメよ!」という、苗字を持つことを強制する法律が1875年に布告されました。これが「平民苗字必称義務令」です。現代ではみんなに苗字があるのが当たり前ですが、それって150年前まではちっとも当たり前じゃなかったんですね。

ですから、聖書の登場人物たちが苗字を持っていないのだって、ちっとも不思議なことではないのです。

それではまた明日。

横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

この記事もおすすめ