レジャーランド教会:子どもの日を迎えた韓国教会の姿 李 恵源 【この世界の片隅から】

韓国における「低出産率」「学齢人口減少」といった現象は、昨日今日に始まった出来事ではない。国および自治体の教育関連機関の発表によると、2025年に「入学児童0人」であった小学校の数は全国で189校となっている。人口の減少を防ぐためには、何よりも「子育てに良い環境」をつくる必要があることは誰もが認めるところであろうが、これまで行われたどのような政策も効果が出ていないのが韓国の現状である。

教会学校(CS)の子どもの数が急減している韓国教会も、「子育てに良い環境」づくりが他に選択肢のない必須課題であることを認識しており、CSの子どもたちだけでなく、教会外の子どもたちのために何を行うことができるのかについても、工夫を重ねている。その一環として今年、韓国でも子どもの日とされている5月5日前後に、いくつかの教会が地域社会とも協力しながら特別なイベントを行っている。今回は、そのことについて紹介したい。

下の写真は、釜山市の海雲台にあるスヨンノ教会が実施した子どもの日関連イベントのポスターである。このポスターによると、教会堂前のスペースには回転木馬やバイキング、ロードトレインなどの乗り物やネイルアートやフェイスペインティングなどの体験コーナーが設置されたほか、ノンバーバルパフォーマンス「NANTA」の公演などが行われた。また教会の建物内では、トッポキ、ホットドッグ、アイスクリームなどの食べ物コーナーが各階に設置されたほか、バンパーカーやバスケットボール、ボードゲーム、アーチェリー、人生4コマ写真撮影、XR体験型ゲーム、風船アートなどのコーナーが設けられ、子どもたちが様々な遊びやアトラクションを楽しむことができるよう工夫されていた。

他の教会のイベントも大同小異のものであった。ソウルのヨンアン長老教会は、教会の隣にある公園に23個のブースを設置し、さまざまなアトラクションや食べ物を提供した。同じくソウルの汝矣島純福音教会は、教会堂前のスペースにそっくりそのままレジャーランドを移してきたかのようにさまざまなアトラクションやキッチンカーを設置し、教会の建物内ではミュージカル公演などを行った。京畿道にあるソンマン教会は、富川総合運動場を貸し切り、富川市と協力して子どもたちが楽しめる40余りのブースを設置した。このように各教会は、キリスト教とは関係のない盛りだくさんのアトラクションを準備し、地域の子どもたちが無料で楽しむことができるようにしたのであった。

教会が地域社会に関わる中で「子育てに良い環境」づくりに参与しようと自らをレジャーランド化したことは、評価すべき試みであったと言える。ただ、キッズカフェやレジャーランドなど子どもたち向けの娯楽が多くあり、また自分の子どもには惜しまず財布のひもを緩める親たちが増える現在、莫大なお金を投じて教会を一日レジャーランドにすることがどれほど「子育てに良い環境」づくりや地域に貢献する方法となるのか、よく考えてみる必要があるかもしれない。

子どもの日のためのイベントを実施した都市部の教会の中には、姉妹関係を結んでいる農村の教会の子どもたちや地域の移民家庭や貧困家庭の子どもたちなど、普段レジャーランドなどでの娯楽を享受する機会が少ないと考えられる子どもたちを招待する教会もあった。このような姿勢と視点をもつことが、子どもの日に特別なイベントを企画する上で教会に求められるものではないであろうか。

李 恵源
 い・へうぉん 延世大学研究教授。延世大学神学科・国語国文学科卒業、香港中文大学大学院修士課程、延世大学大学院および復旦大学大学院博士課程修了。博士(神学、歴史学)。著書に『義和団と韓国キリスト教』(大韓基督教書会)。大阪在住。

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