【インタビュー】みなみななみさん 最新刊『ななさんぽ』で気づいた「自分を変える」生き方

 

イラストレーターのみなみななみさんの最新刊『ななさんぽ──弱さと回復の“現場”で神がいるのか考えた』(いのちのことば社)が8月に発売された。月刊「百万人の福音」に2015年1月号から18年12月号まで連載された内容を1冊にまとめたもの。家庭内暴力(DV)やアルコール依存症、ひきこもり、貧困など、社会的に「弱き者」とされる人々のそばで、さまざまな問題と取り組む人々をみなみさんが取材し、レポートしている。

みなみななみさん

イラスト・ルポを描く中で最も苦労したのは、「取材内容を3ページにまとめることでした」とみなみさんは話す。

「現場でのご苦労や、活動する中で受けた祝福など、一度の取材でたくさんお話を伺うので、すべてを描ききれなくて……。毎回、『神さま、この記事の中で、私にいちばん描いてほしいことは何ですか。神様がいちばん伝えたいことは』って祈りながら描いていました」

どの取材先でもそれぞれ、大切なことを教えられたが、4年間の連載最後に訪れた、DV加害者の更正プログラムを行っているNPO法人「女性・人権支援センター ステップ」も印象深かったという。

「テレビで取り上げられていたのを見て、ぜひお話を伺いたいと取材しました。でも、実際に施設を見学するまでは、DV加害者が更正するなんて信じられないと思っていたんです。

このプログラムは、毎週行われるセミナーに1年間通っていく中で、暴力によらずに問題に対応する方法を身につけていくというもの。中には、1年ではDVが治らないからと、2年続けて通っている方もいらっしゃいました。

セミナーでは、代表の栗原加代美(くりはら・かよみ)さんによる講義や、夫役と妻役に分かれて行われるロール・プレイ、1週間の出来事を振り返ってのシェアなどが行われていました。その中で参加者が『妻のためにやってあげたのに、感謝どころか文句を言われた』、『自分も悪いかもしれないが、妻だって悪い』と言ったのです。

すると別の人が、『相手が悪いと思っているうちは関係性は変わらないよ。他人は変わらないから、自分が変わるしかない』と言ったのには本当に驚きました。居丈高に説教をしたわけではなく、とても穏やかな態度だったのです。少し前まで暴力をふるっていた人が、『自分が間違っていた』と認め、相手の罪を責めるのではなく、『自分を変えよう』と決心することで人は本当に変わるんだということを目の当たりにしました。クリスチャンとして生きる道のりにも似ていますね」

また、精神障がいなどを抱えた人々の地域活動拠点となっている北海道「べてるの家」のソーシャルワーカー、向谷地生良(むかいやち・いくよし)氏と当事者研究を体験する会では、目から鱗(うろこ)が落ちるような経験をしたという。

「本にも描いたのですが、問題を抱えていると思っていた私の友人のことを相談した時に、『誰か一人でも尊敬をもってその方の話に耳を傾ける人がいるといいですね』と言われたことが心に刺さりました。それまで私は友人に対して『助けてあげよう』、『何とかしてあげよう』と上から見ていたことに気づかされたんです。

また、その頃の私は世間の基準に自分を当てはめ、『自分の人生はうまくいっていない。それは神の愛がないからなんだ』と思っていました。でも取材を通して、それは根本的に間違っていると教えられました。神様は一人ひとりの存在そのものを大切に思っていて、弱っている人を助けてくださる。

立場や活動内容は違いますが、取材で出会った施設の関係者の方々は、それぞれが神様に導かれて従った結果、すべての人が人として尊敬され、大切にされるために働くことを選ばれたと思うんです。それはまさに神様の思いで、出会った一人ひとりを通して、神様がやりたいことに触れさせていただいたという気がしています。取材させていただいた方々は本当に素敵な方ばかりでした。心から感謝しています」

「ななさんぽ」の連載は終わったが、みなみさんは今後もメディアを通して御言葉や神様の愛を伝えていきたいと話す。

「人権侵害や虐待、ほかにも世の中には残念な出来事がたくさんあります。私が描いたところで影響は少ないかもしれませんが、大勢の人が発信すれば、世論は変わることもある。何よりも、人が人として扱われていないことを神様は悲しまれ、同じように悲しんでいる人を用いてくださいます。

いま私がこの時にメディアの一端に置かせられていることにもきっと意味があるのかなと思っています。どういうかたちで結果が出るかは分かりませんが、『神様、いま私に描いてほしいものは何ですか』と祈りながら、今、自分に与えられてる場所でできることは何かを模索しています」

河西 みのり

河西 みのり

主にカレーを食べています。

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