【毎週日曜連載】神さまが共におられる神秘(99)稲川圭三

主の死と復活を告げ知らせる

2017年4月16日 復活の主日ミサ
(典礼歴A年に合わせ3年前の説教の再録)
あなたがたに平和があるように
ヨハネ20:1~9

今日、全世界の教会で主の復活が祝われています。復活とは、人間の中に永遠のいのちの神さまが共にいてくださるという真実に出会わせていただくことです。

私たちは土の塵(ちり)で創(つく)られた、初めがあり、終わりがある存在です。しかし、その中に神はご自分の息、つまり永遠といういのちを吹き入れられ、一緒に生きる者となっておられる。これが私たち人間という存在の真実です。

イエス・キリストは、その真実が真実であるということを、ご自分の死と復活をもって証ししてくださいました。

私たちは、「人は死んだらそこで終わってしまう」、「もうその時から、過去の思い出の中でしか出会うことができないいのちとなってしまう」という勘違いに縛られています。

週の初めの朝早く、マグダラのマリアが墓に行ったとき、墓から石が取り除けてありました。それは、人間のいのちが死んだらそこで終わってしまって、もう出会えなくなるという勘違いを神が取り除かれたしるしです。

マグダラのマリアが墓に行くと、イエスの遺体はそこにありませんでした。それでペトロともう一人の弟子のところに行って、「誰かが主を墓から取り去りました。どこに置いたのか、分かりません」と言っています(ヨハネ20:2)。マグダラのマリアは、誰かがイエスの遺体を運び去ったのだと考えたようです。

マグダラのマリアは墓に行って、イエスの遺体に会い、イエスとの思い出に浸りたかったのかもしれません。墓というのは、「人間が死んだらもうそこで過去のものになってしまう」というまなざしの象徴の場所です。

しかし、人間は決して死によって過去のものになどなってしまいません。神さまのいのちに結ばれて、死を超えて出会い続けるいのちであることを私たちすべてに分からせるために、イエス・キリストは復活してくださいました。

先週の日曜日、目黒教会と高輪教会、麻布教会の中高生たちが集まって、雨降りの日だったのですけれど、リーダーと合わせて30人くらいでバーベキューをしたんです。そのとき司会進行をしていたリーダーが、「お互い自己紹介しましょう。教会名、名前、学年、学年以外の人は年齢。あとは今年の抱負を言ってください」と言われて、「じゃあ、いちばん年齢の高い人から」と、私から自己紹介をすることになりました(笑)。

「麻布教会主任司祭の稲川圭三です。5年目、4月になると6年目になります。58歳。今年の抱負は、すべての人にキリストの死と復活を告げ知らせることです」

そう言いますと、中高生やリーダーたちから、「おお、さすがは神父さん(笑)」って言われました。

私は、「すべての人にキリストの死と復活を告げ知らせること」と言いましたが、これは何か単なるキャッチフレーズのように言っているのではありません。私の中でこのイメージはすごくはっきりしています。

ところで、お嬢さんは洗礼を受けておられるけれど、そのお母さんは洗礼を受けておられないという母娘が、昨日、復活徹夜祭のミサにあずかっておられました。よく一緒にミサに来られる方です。

そのお母さんのおじさんが連れ合いを亡くされて、ひどく落ち込んでしまったので、電話で1時間くらい話をされたのだそうです。「いつも神父さんがおっしゃっていることをそっくりそのまま受け売りで言ったんですけれど」と言いながら話してくれました。

「おじさん、(亡くなった)おばさんはね、生きていた時よりももっと深く、もっといつも、もっと一緒の向きで生きているいのちになっておられるのですよ」

そういうことを切々とおっしゃったのだそうです。そうしたらそのおじさんは本当に立ち上がって、「その言葉に助けられた。姪(めい)に言われた言葉に強められた」と、今度はいろいろな人に言って回っているというのです。

その洗礼を受けていないお母さんは、「ミサに出ていて、神父さんの話を聞いていて本当によかった」と言っておられました。

神さまが私たちと一緒にいてくださることは真実です。そのことを誰が言うのかを超えて、真実です。そのことを私たちがどれだけ深く信じているかということを超えて、真実です。だから、告げられる必要があります。

私は思います。すべての人間の中に主イエス・キリストはすでに復活しておられます。そのことに出会わせていただいたら、私たちはそれを人に告げるだけなのではないでしょうか。自分がどれだけ深く思っているかを超えて、真実であるから、そのことを告げる。それが必要なことではないかなと思いました。

今日、ご復活を大勢の人と共にお祝いしたいと思います。私たちだけのお祝いではありません。すべての人のお祝いです。たくさんの人に良い知らせを告げ知らせながら、この感謝の祭儀をおささげしたいと思います。

 






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