2023年2月11付本欄に寄稿した際は、スコットランド国教会が逼迫した財政状況を改善するため、中会や諸教会の合併計画を進めていることを報告した。詳細は当時の記事を振り返っていただければと思うのだが、ここでも簡単に状況をおさらいしたい。国教会が長年抱える問題は大きく三つある。牧会者の不足、財政の逼迫、そしてこれらに対して、多すぎる建物の所有数である。こうした問題を解決するため、大会は2018年に「中会計画(Presbytery Plan)」を発表した。計画の一つ目の柱は、国内に48ある中会を合併し、その数を12にまで減らすこと。二つ目の柱は、各中会地域を分割し、同区画内に位置する教会同士は、牧師の兼任や建物の売却を行い、会衆を統合することである。すなわち、今は所々に点在している小さな会衆を、物理的に一箇所に集約しようというのだ。
中会計画の中で、私の働く教会は、近接する他三つの教会と合併することとなった。それは、四つの建物と4人の常勤牧師を、二つの建物、2人の牧師、一つの小会へと縮小することを意味する。2018年時に示されたタイムラインでは、2024年12月31日までに、4教会の間で合併後のビジョンを明確にし、2025年12月31日までに新形態での教会運営へと移行する予定だった。そこからちょうど1年半が経ち、かなり状況にも変化があったため、ここで改めて近況を報告したい。
今年4月、中会は四つの教会の建物のうち、一つを売却するという決断を下した。該当教会の礼拝に現在出席する信徒は、建物の売却後、私の働く教会を含める三つの会衆のいずれかに合流することが期待されていた。これは実質的に中会から解散を命じられたに等しい。もちろん売却を言い渡された教会はこの決定に納得するはずがなく、売却決定が発表された直後に中会に計画の見直しを求めた。そして先週、中会も計画の見直しに同意した旨が全4教会に伝えられた。これに最短でも3カ月かかることを踏まえれば、今年の12月までに合併後のビジョンを明確にするという本来の目標は到底達成できるものではないだろう。
以前の報告で、この中会計画は教会が「ナマもの」であるということを完全に見過ごしているのではないかと指摘した。計画は、まるで教会を地図上の位置や会員数、建物の価値といった量的な仕方でしか見ていない。確かに地図上では、会員の少ない教会の建物を売り、そこに集まっている人たちを近隣の教会に移すことは可能に思われるのかもしれない。しかし、果たして本当にそうだろうか。それは植物を根から引き抜いて他の場所に植え替えたところで、以前同様に花が咲くとは限らないのと同じだ。花が咲くのには、その場所の地質や空気、日当たり、水はけなど多様かつ時には私たちの想像の及ばない、目に見えない要素が複雑に絡み合っている。
先週、私の働く教会のチームミーティングでもこの問題が話し合われた。私たちの多くは、もうこの段階で4教会の合同ということが不可能になっているのではないかと感じている。限りなく可能性は低いが、もし中会が計画を見直し、教会の建物の売却を中止したとしたら、4教会は四つの建物を維持しながら、2人の牧師が交替で礼拝を担当することになるだろう。そうなった時、それぞれの建物に身を置きながら、どのようにして私たちは「一つの教会」を作っていけるのだろうか。
また反対に、中会が再度売却を言い渡した場合、それは確かに実行されるだろうが、その後その教会に出席していた人々が他3教会に移動する可能性はほぼないだろう。すでに売却に関する議論が進む中で、3教会と売却が予定される教会の間には分断が生まれている。実際に建物を売却した後に、どうやってこの分断を埋めるのか、なかなか想像することは難しい。それにはもちろん、売却が言い渡され、実質解散が申し渡された教会に対して他3教会がそれほど同情的、あるいは協力的な姿勢をしめしていないということも問題としてあるだろう。
たった数年間の合同の過程で生じた中会、そしてお互いに対する不信を乗り越え、一つの群れになる道は、まだ遠いように思われる。
藤守 麗
ふじもり・れい 1998年東京生まれ。京都大学文学部キリスト教学専修、エジンバラ大学神学部修士課程聖書学コース卒業。現在は、スコットランド国教会にてユースワーカーとして働く。主な関心領域は旧約聖書のフェミニズム、ポスト・コロニアル解釈。