クリスチャントゥデイ裁判 報告会で韓国メディア「ニュースNジョイ」記者が証言 実態は日韓で酷似

 株式会社クリスチャントゥデイ(矢田喬大社長)が名誉棄損で訴えた110万円の賠償請求に対し、50万円の支払いを命じる東京地裁判決(本紙5月11日付で既報)を受けて6月13日、被告の根田祥一氏(クリスチャン新聞顧問)と、それを支援するキリスト教カルト問題連絡会は都内で報告会を開いた。同連絡会に加盟する日本基督教団、カトリック教会、日本聖公会、在日大韓基督教会、日本福音同盟に属する福音派を含め、諸教派から約70人が参加した。

会では根田氏に加え、代理人弁護士である久保内浩嗣(ひろつぐ)氏のほか、韓国のクリスチャントゥデイ問題を追及してきた韓国メディア「ニュースNジョイ」記者のチェ・スンヒョン氏、通訳を担った卓志雄(タク・ジウン)氏(日本聖公会管区事務所宣教主事)が登壇。司会は日本基督教団カルト問題連絡会世話人の豊田通信(みちのぶ)氏(日本基督教団小田原教会牧師)が務めた。

会の冒頭、久保内氏が裁判の概要を解説。裁判では根田氏がSNS上で引用したブログ「ダビデ牧師(張在亨=ジャン・ジェヒョン=氏)と共同体を考える会」内で、元信者らによる証言を載せた記事が名誉毀損に当たるか否かが争われた。かつてクリスチャントゥデイで働いていた中橋祐貴氏は同ブログで共同体の実態を告発したものの、訴訟により精神
的に追い詰められ、最終的には自ら「謝罪文」を書き「和解」するに至っていた。

今回の判決では「原告との訴訟による疲弊を避ける目的で、本件謝罪文等を作成したと認めるのが相当である」とし、中橋氏の謝罪によってブログ記事が虚偽であるとの根拠にはならないとした。新たな事実認定の成果を上げられた要因として久保内氏は、2人の脱会者が実名で陳述書を提出したことを挙げた。

根田氏は、今回の判決について原告側の主張だけを報じたクリスチャントゥデイの記事を例に、「キリスト教メディアを謳いながら、客観的な事実の一部だけを伝え、都合の悪い部分は隠すという特色を持っている。この偽装こそが問題の核心」だと強調。「原告は私の動機を、競業する後発メディアを貶(おとし)めるための行為と繰り返し主張してきたが、正体を隠して人々を騙す報道をメディアに身を置く者として看過するわけにはいかなかったという、公益性に基づく反論が認められた」と判決の意義を評価した。

続いて発言した「ニュースNジョイ」記者のチェ・スンヒョン氏は、今回の判決は同紙がこれまで追及してきた疑惑が事実と認められたもので、韓国にとっても大きな意味があるとし、20年前からキリスト教ジャーナリズムの良心にかけてこの問題を追及し、被害者の苦しみに耳を傾けてきた根田氏に敬意を表した。

また今回の判決について韓国のクリスチャントゥデイが一切報じていないことから、その内容が彼らにとって都合が悪いからではないかと推察し、「彼らはこれまで、脱会者たちの証言はすべて嘘だと報じてきた。韓国の読者にこの判決を伝えて、関連団体の疑惑についても明らかにしていきたい」と抱負を述べた。

これまでも「ニュースNジョイ」が批判的な記事を書くと、北朝鮮や共産主義とつながりのある「アカ」の媒体がフェイクニュースを拡散しているなどの対抗記事が即座に掲載されてきたという。また、疑惑を追及するメディアや記者は執拗な攻撃やスラップ訴訟の標的にもなってきた。

韓国にはダビデ張氏系列の媒体としてクリスチャントゥデイ以外にも、基督日報、ベリタス、財経日報などがあるが、一般的なキリスト教のニュースを報じているため、一見、異端系のメディアだとは気づかれず、その実態や歴史的経緯などを知らずに関係を深める信徒や神学者も少なくない。他にも、スピードと記事の量を優先する、勤務条件が厳しい、目的遂行のためには嘘をもいとわないなど、これまで日本のクリスチャントゥデイが指摘されてきた問題点とほぼ重なる。

チェ氏はさらに、判決の報を聞いたオリベット大学(張氏が米国で設立)の脱会者から寄せられたという以下のメッセージを代読した。

「詐欺師の嘘に騙され、美しく高貴な人生を奪われた多くの人々のために闘っていただきありがとうございます。彼らと闘うため賠償金を払わなければならない悲惨な現実に心痛めます。しかし、今回のことで多くの人に対する労働搾取が真実であることが明らかになりました。彼らはキリスト教を悪用する犯罪集団にすぎないのです。真実と愛の道は必ず勝利すると信じています」

続くパネルディスカッションでは、本紙編集長の松谷信司氏による進行のもと、日本基督教団カルト問題連絡会の齋藤篤氏(日本基督教団仙台宮城野教会牧師)も加わり、クリスチャントゥデイを取り巻く教会の現状と課題について意見を交わした。これだけの問題がありながら、クリスチャントゥデイの記事を拡散する信徒や牧師も少なくない現状について根田氏は、「記事を読む限り、それ自体が有害だとは思わないが、それらを無批判に引用する行為には道義的責任が問われる。彼らが堂々とダビデ張氏を『再臨のキリスト』と信じていると明かした上で活動するなら自由。実態を隠して淀橋教会に近づき、偽りによって峯野龍弘氏をはじめ著名な牧師たちを欺き続けていることが問題。2人の脱会者が証言しているように、実際に被害者が生まれている問題だと認識してほしい。クリスチャントゥデイの社長である矢田氏も、ある意味で被害者」と語った。

さらに、今も彼らを擁護し続ける峯野氏について「自分の目で事実を確かめてほしいと繰り返しお願いしてきたつもりだが、『悪い人ではない』『異端とは思えない』という認識。真実は隠されているので、直感的・感覚的に判断できる問題ではない」と指摘。「日本の教会指導者には、ぜひメディアリテラシーを磨いていただきたい。偉い先生が言ったから大丈夫だと思い込むのは、あまりにも無責任すぎる。頼まれたら断れないという文化についても猛省が必要」と苦言を呈した。

*全文は7月1日付本紙に掲載。電子版(PDF)は以下のnoteでも購読可能。

https://note.com/macchan1109/m/mc01613d1fac9

クリスチャントゥデイ裁判 東京地裁 〝信仰を隠して接近〟と認定 名誉棄損は一部認める 2024年5月11日

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