日本最大のプロテスタント教団である日本基督教団の道家紀一(どうけ・のりかず)総務幹事は、新型コロナ・ウイルスへの対応について、次のように語る。
「合同教会である日本基督教団には、さまざまな神学的・歴史的背景を持っている教会があるため、十把一絡(じっぱひとから)げの対応をすることはできず、全国に17ある教区との協力を意識した支援を検討し、実行しています。
また、今年行われる予定の教団総会(2年ごとに開催)について、一教区から延期の要望が議長宛てに届いていますが、現段階では何も決まっていません。しかし、検討中の『教団機構改定』についての議論が十分できない中で総会を迎えることの是非は問われています」
10日付の「第3信」となる教団からの声明では、「新型コロナ・ウイルスの感染拡大を防止するために、感染の危険が高まっている地域の教会・伝道所では、極力、教会に集わない方法で礼拝をささげることを講じてください」と強く呼びかけた。教団の本部にも、特に信徒の家族から、組織として強い対応を取るよう望む内容も多いというが、「全員が納得する対応をすることは難しい」と道家氏は語る。
「オンライン礼拝などの対応についても、インターネット強者と弱者のようなものが生まれてしまっているのではないでしょうか。そのため、どうしても礼拝に参加できない人への牧会として、感染防止対策を十分に取った牧師が一つひとつの家を回るという例も報告されています。そういう意味で、同一の行動を取る『一致』よりも、それぞれの教会や牧会者同士が励まし合う『連帯』が求められている事態です」
水谷潔氏(日本福音キリスト教会連合・春日井聖書教会協力牧師)は各教会での対応について次のように推察する。
「それぞれの教派・教団グループにもそれぞれの事情があり、どんな対応を取っても批判の板挟みになって身動きが取れなくなっているのではないでしょうか。しがらみが少ない立場として個人的見解を述べさせてもらえば、教会や教団、そして一人ひとりの牧会者に対して、『スーパーマン』のような超能力を求めてしまっている教会員が多くいるのかもしれません」
これまでに起こった自然災害などの事態には、「一致団結して対応する」ということができたが、「コロナは連帯分断的という意味で、悪魔的です」とブログに投稿した。
「この投稿には特に反応が多くて驚きましたが、分断され、板挟みにされ、孤立してしまっている人たちの『声なき声』を感じました。
責任感の強い牧師ほど、過剰な要求に対しても応えようと頑張ってしまいます。そういった精神的な負担は、少し後になってから現れることが多いのですが、すでに燃え尽き症候群のような症状が出ている人もいると聞きます。このままでは来年には、精神的にすり減ってしまった多くの牧師が職を離れてしまうのではないでしょうか。
信徒たちも、牧師や役員にすべてを任せるのではなく、ワン・チームとしての意識を持ち、友人や家族、近隣教会などとの協力を仰ぎながら対応を考えていくべきでしょう。いま私たちは『教会の本質』を問われています。『神のわざのために何が望ましいのか』を考えながら、これからも呼びかけを続けていきたいと思います」