11月9日からトルコ・アンタルヤで開催される国連気候変動枠組条約第31回締約国会議(COP31)を前に、世界教会協議会(WCC)、ACTアライアンス、ルーテル世界連盟(LWF)の3団体は6日、各国政府に温室効果ガスの排出削減と途上国への気候資金の拡充を求める共同声明を発表した。声明では、気候変動による被害が貧しい国々や社会的に弱い立場の人々に集中していることを問題視し、気候資金の提供は「慈善ではなく正義の問題」だと強調した。
声明は「創造世界は神聖な賜物であり、商品ではない」との認識を出発点に、企業利益や地政学的な思惑よりも、人々の暮らしと将来世代の命を優先すべきだと主張。歴史的に大量の温室効果ガスを排出してきた先進工業国には、石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料から、公正かつ秩序ある迅速な転換を主導する責任があると訴えた。
WCCのジェリー・ピレイ総幹事は、地域社会や子どもたちの未来、地球上の生命を企業利益や地政学的な思惑よりも優先しなければならないと指摘。「私たちの未来は売り物ではない」と述べ、歴史的な排出量が多く、対策を講じる能力も高い富裕国が率先して行動するよう求めた。
ACTアライアンスのルーデルマー・ブエノ・デ・ファリア事務総長は、気候資金について「教会にとって、気候資金は慈善ではなく正義の問題だ」と強調。2024年のCOP29で合意された、2035年までに途上国向けの気候資金を年間少なくとも3千億ドルに引き上げる目標を実現するよう求めた。
COP29では、それまでの年間1千億ドルから3倍となる資金目標が合意されるとともに、公的・民間資金を含め、2035年までに年間1兆3千億ドル規模へ拡大するための取り組みが呼びかけられた。しかし、資金の確保や負担のあり方は引き続き課題となっている。3団体は、気候危機を引き起こしてきた歴史的責任を踏まえ、先進国が約束を履行する必要性を強調している。
LWFのアンネ・ブルクハルト総幹事も、創造世界を守ることは教会の中心的な使命に根差していると指摘。気候変動の影響を最も強く受ける国々の教会は、すでに日々その重荷を担っていると述べた。さらに、気候正義は将来世代に対する正義でもあるとし、各国政府に最も脆弱な立場にある人々を守るよう呼びかけた。
声明の背景には、温暖化対策の遅れに対する科学的な警告がある。国連環境計画(UNEP)が10月21日に公表した「排出ギャップ報告書2026」は、地球の平均気温上昇が産業革命前と比べて1.5度を一時的に超える可能性が極めて高いと指摘。今世紀末までに再び1.5度以下へ抑えるためには、世界全体の温室効果ガス排出量を2025年比で2030年までに18%、2035年までに45%、2040年までに69%削減する必要があると試算している。
こうした中、キリスト教諸団体が重視しているのが「気候正義」という考え方だ。気候変動を単なる環境問題ではなく、貧困や格差、人権、世代間の公平性に関わる倫理的課題として捉えるもので、温室効果ガスの排出にほとんど責任を負ってこなかった地域ほど、洪水や干ばつ、食料不足などの深刻な影響を受けているという不均衡を問題にする。
WCCやLWFなどは、これまでも国際的な気候交渉に参加し、化石燃料からの転換、途上国支援、先住民族の権利保護などを求めてきた。2025年から2034年までを「気候正義のためのエキュメニカル行動の10年」と位置付け、教会間の協力を通じた取り組みも進めている。今回の共同声明は、気候変動対策を政治的な選択肢の一つとしてではなく、信仰に基づく責任として訴えるものとなった。
3団体はCOP31の会期中、代表団が共同で交渉の進展を確認し、毎朝と夕方に協議を行う予定。11月15日にはアンタルヤの聖アリピオス教会でエキュメニカル礼拝を開き、気候危機に直面する人々への連帯と、各国政府の責任ある行動を祈り求める。
COP31は11月9~20日に開催され、トルコが開催国・議長国を務め、オーストラリアが政府間交渉の議長を担当する。気候対策に必要な資金を誰が、どのように負担するのかが主要な論点の一つとなる中、世界のキリスト教団体は、すでに交わされた国際的な約束を具体的な行動につなげるよう求めている。
*写真=Paul Jeffrey/Life on Earth
