街はすっかりクリスマスムード、流れる音楽もクリスマスソング。日本人にとって、この季節は讃美歌や聖歌に最も多く触れる季節ではないでしょうか。しかし、そもそもよく聴くクリスマスソングの中のどれが讃美歌なの?
さらにそもそも讃美歌って何?聖歌と讃美歌とゴスペルって何が違うの?
・・・と、いろいろ疑問も出てきますよね。と、いうわけで今回はそのあたりについていくらか説明いたしたく思います。よろしくおつきあいくださいませ。
クリスマスソングと「讃美歌」の違い
クリスマスソングにはたくさんの種類がありますよね。マライア・キャリーさんの「All I Want For Christmas Is you」もクリスマスソングですし、山下達郎さんの「クリスマスイブ」だってクリスマスソングです。1942年にビング・クロスビーが歌った「White Christmas」は「最高のクリスマスソング」と呼ばれます。この曲の累計シングル売上はなんと5000万枚でギネス世界記録になっています。さらに様々な人がカバーしたものまで含めると1億枚にもなるそうです。
しかし、これらの曲はどれも「讃美歌」ではないんです。「讃美歌」というのは、教会で演奏されたりするいわゆる「教会音楽」の一部で、特に神様を讃える意味の歌詞を持つものを指します。さらにその中で特にイエス様の降誕について歌ったものが、クリスマス讃美歌です。
クリスマスの祝う歌であっても、神様を讃えていなかったり、イエス様の降誕を喜んだりしていなければ、それは「讃美歌」とは言えないんです。マライアさんの歌も山下さんの歌も神様を讃えるというよりはラブソングですから、「讃美歌」とは呼べないわけです。グロスビーさんの「White Christmas」を「讃美歌」と思っている方も多いですが、この歌もクリスマスの情景を表現しているだけで神様を讃えてはいないので「讃美歌」ではないんです。
同じ理由でクリスマスによく歌われるサンタクロースをモチーフにした歌の数々も、あくまでクリスマスソングであって「讃美歌」ではないんです。
クリスマスの讃美歌として有名なものには
「荒野の果てに(ぐろー、おおおおおー、おおおおおー)」
「もろびとこぞりて(シュワッキッマッセェリー)」の他、
「きよしこの夜」「牧人ひつじを」「さやかに星はきらめき」などがあります。
讃美歌と聖歌とゴスペルのちがい
先ほどから「讃美歌」とカギかっこつきで表記してきましたが、これには理由があります。実は多くの方が「讃美歌」と呼ぶものは、必ずしも讃美歌であるとは限らないんです。話がややこしくなってきましたが、簡単に言えば、教会音楽の1ジャンルとして聖歌があり、聖歌の1ジャンルとして讃美歌があります。さらにそのまた1ジャンルとしてゴスペルソングがあります。
さらにもっと簡単に言えば、神様を讃える歌のことを、カトリックでは聖歌と呼び、プロテスタントでは讃美歌と呼ぶ!・・・と、これだけでも覚えておけば、それだけで他の人より一歩進んだ豆知識を持っていると言えるでしょう。
とは言えもう少しだけ大雑把ながら解説しておきますと、歌のあるなしに関わらず教会で神様を讃える目的で演奏される音楽を「教会音楽」と言います。その中で歌詞を伴うものを「聖歌」と呼び、これは古くから教会の儀式などで用いられてきました。さらにその「聖歌」の中で一般会衆、すなわち民衆がみんなで歌うようになったものを「讃美歌」と呼び、この「みんなで歌うスタイル」はプロテスタントで特に強く発展しました。そしてさらにその「讃美歌」の中で、アメリカの黒人教会でブルースなどと融合して独自のジャンルとなったのが「ゴスペル」です。ちなみに「ゴスペル」というのは「福音」という意味で、「福音を歌う音楽」ということでこれを「ゴスペル・ミュージック」と呼ぶようになりました。ですから、近頃ではゴスペルは純粋な音楽の1ジャンルになって、キリスト教とは関係のない歌詞の曲もたくさんありますが、厳密に言えば音楽性が「ゴスペルっぽい」ものであっても、歌詞が神様を讃えていなければそれはゴスペルではないんです。・・・まぁしかし今では一般名詞として使われて愛されているわけですから、そこにそれほど目くじらを立てることもないとは思いますが。
先ほど「カトリックは聖歌、プロテスタントは讃美歌」と言ってしまいましたが、実はプロテスタント教会でも教会で使う歌集は「聖歌」とか「新聖歌」とか呼ばれていたりします。プロテスタント教会ではそれほどその呼び名にこだわっていないんです。一方カトリック教会では歌集を「讃美歌」と呼ぶことは基本的にないようです。
・・・と、解説させていただきましたが、面倒なのでここからもそういったものをまとめて「讃美歌」と呼んで解説を続けて参ります。あしからずご了承ください。
・・・とか言いつつ、そろそろお時間なので、次回へ続く。