「既婚男性を司祭に叙階できるように」という提言も含まれた33ページに及ぶ最終文書を、「アマゾン周辺地域のための特別シノドス(世界代表司教会議)」は10月26日、採択した。
シノドスは先月6日からバチカン(ローマ教皇庁)で3週間にわたって開かれ、気候変動や貧困、水質汚染、女性への暴力など、同地域が直面するさまざまな課題が議論された。その中で、特に奥地において司祭が不足している問題が取り上げられ、「多くの人が聖体拝領にあずかることができない。既婚者でもミサを行えるようにしてほしい」という要望について話し合われた。
1139年の第2ラテラノ公会議で司祭の独身制が定められて以降、カトリックの司祭は独身の男性しかなることができなかったが、その約900年続いた伝統が変わる可能性がある。
バチカン・ニュースによると、最終文書の第5章にある「ミサへの参加と司祭叙階」の項目には大筋次のように書かれているという。
ミサへの参加は、キリスト教共同体にとって、中心的なことである。しかしながら、アマゾンの教会共同体は、ミサに与(あずか)るために膨大な困難を抱えている。
司祭がミサを司式するため、あるいは赦しの秘跡、塗油の秘跡を授けるために、一つの共同体を訪れるのは、数カ月や数年ぶりであることがある。
シノドス文書は、教会共同体への奉仕にあまねく自らを捧げる司祭の独身性を神の賜物として、その価値を大切なものとし、独身性を生きる司祭たちに対し、多くの召し出しを祈っている。
その一方で、司祭の独身性は、「司祭自体の本質からは要求されていない」ものであることを指摘。
アマゾン地域の広大さと聖職者の少なさを考慮し、同文書は、「終身助祭としての豊かな経験を持ち、司祭になるための相応の養成を受けた者が、正当に形成された安定した家庭を保ちつつ、アマゾンの最も遠隔な地域において、御言葉を伝え、秘跡をとり行うことを通して、キリスト教共同体の生活を維持することができるよう、共同体で認められたふさわしい男性を司祭に叙階するための規則と処置を、担当当局が制定すること」を提言している。
なお、この提言については、いく人かの司教から、特定地域に限定されない、普遍的なテーマであるとの意見が出された、と明記されている。
既婚者の司祭を認めるにあたって教会法を改定する必要はないが、この採択が効力を持つためには教皇フランシスコの承認が必要だ。そこでシノドスは、司祭を独身者に限定した規則に例外を認めるよう教皇に要請した。この提言を受けて教皇も、年末までに公式に認める意向を示している。
教皇は今年1月、記者の質問に答えて次のように答えている。「個人的には、独身制は教会にとって神の賜物であり、独身について選択制にするのは認められるべきではないと思う。しかし、太平洋の島しょ部や南米アマゾンといった地域では可能性がある」。またこれまでも、「教義上、既婚男性が聖職者になることは禁じられておらず、規則を変更する可能性もある」と繰り返し述べていた。
ただ保守派からは、「例外を認めれば、世界規模で司祭の独身制が廃止されることになりかねない」という反発もある。今回の項目ごとの採決でも、賛成128票、反対41票で、最も反対票が多かった。