パリ五輪閉幕 活躍したアスリートたちの信仰

パリ五輪が8月11日に閉幕した。多くの観客にとって、オリンピックは最高レベルのスポーツ技術を披露する場である。しかし、多くのクリスチャン・アスリートにとっては、互いに、そして世界に向かって信仰を表現する機会でもある。以下は、パリ・オリンピックにおけるキリスト教的表現の最も印象的な瞬間である。「クリスチャニティ・トゥデイ」の記事から紹介する。

ハードルの女王、いつものように神を称える

今から100年前、1924年のパリオリンピックで、エリック・リデルは日曜日の100メートル走を辞退し、土壇場で400メートル走に変更し、見事金メダルを獲得した。今年8月8日、2024年パリ五輪で最も注目を集める福音派クリスチャンの一人が、同じ距離で、10個のハードルを乗り越えて、同じように見事なパフォーマンスを披露した。

高校在学中に初のオリンピック出場権を獲得したシドニー・マクローリン・レブローン(アメリカ)は、400メートルハードルで自身の世界記録を更新した。彼女のタイムは50秒37で、1.5秒差で金メダルを獲得した。たとえるなら、マラソンで3分以上の差をつけて優勝したようなものだ。

レースのビデオを見ると、マクラフリン・レブローンと彼女の主なるライバルであるフェムカ・ボル(オランダ)は、六つのハードルまではほぼ互角だった。しかし、ボルが最後の三つのハードルをかすり音とともにバランスを保つのに苦労したのに対し-集中しなければならない出来事では所詮人間、よくある経験-、マクローリン・レブローンは完璧なストライドで、まるで疲れも感じないかのように、交互に離陸する脚で走った。

マクラフリン=レブローンは、数々のインタビューや著書『Far Beyond Gold:金メダルよりはるかに高く~恐怖から信仰へ走る』を通して、彼女のクリスチャンとしての証を広く世に知らしめた。「私ができることはすべて神のおかげです。神様は私に才能を与えてくださり、自分自身を向上させ続けようとする意欲を与えてくださいました。だから私には舞台があり、私はそれを神の栄光を表すために使っているのです」彼女は8月8日のレース後のNPRのレポーターの質問への返答で言った。「だからコースに出る時はいつも、『神よ、結果がどうであれ、あなたが栄光を帰されるための器とならせてください』という祈りを捧げるの。私のパフォーマンスだけでなく、私の態度、私の所作。だから、何が起ころうとも、神様が私を通して賛美を得ることを知ることで、自由になれるのです。だから私は今行っていることをしているのです」

レベッカ・アンドラーデ:その信仰深さと神の恩寵が競争相手からの愛を獲得する

世界中の多くの人にとって、アメリカの体操選手シモーネ・バイルズはパリ五輪の最も目立つ顔である。8月5日、バイルズとチームメイトのジョーダン・チャイルズが、スポーツマンシップに則った態度でメダルの表彰台でブラジルの競合相手レベッカ・アンドラーデに頭を下げた時、それは記憶すべきオリンピックシーンとなった。

アンドラーデは床運動競技で金メダルを獲得したばかりで、バイルズとチャイルズはそれぞれ銀メダルと銅メダルを獲得していた。

アメリカの2人のスターは、アンドラーデのことを「女王」「象徴」「レジェンド」と称え、長年の熾烈な競争を通じて分かち合ってきた国際的な友情に言及した。

25歳のアンドラーデは、キャリアの中で3度のACL損傷の回復手術を受けたが、神への感謝を恥ずかしげもなく口にした。跳馬で銀メダルを獲得した後のインタビューで、彼女は歌い出した。「神様は、私が今日目標を達成できるように準備してくださっていたのです。そして、この歌にはこう書かれています。『私はあなたのためにこれから来る新しい時を準備している……待って、私はパーフェクトにそれを行っておりあなたはご覧になるでしょう』。神様は私が想像もしなかったようなことをしているのです」

2年前のインタビューでアンドラーデは、彼女の回復力を与えてくれたのはクリスチャンとして育ったおかげであり、オリンピックでの不安に対処するために、「私はいつも聖書を持って競技に臨み、トイレに行く時にそれを読んでいた」と語った。

彼女はまた、2019年に3度目の手術を受けた後、神がどのように励ましてくれたかを語った。「私は友人と同じ部屋にいて、精神的にハグを求めていました。なぜなら私は母ときょうだいと遠く離れていたから。ヘビースリーパーの友人が何も言わずに起き上がり、私を抱きしめてくれた。その瞬間、神様が私とともにいてくださり、抱きしめてくださったのだと気づいた。その瞬間、私は決心した。『私は立ち止まらない。もし私がまたこんな目に遭わなければならないとしたら、それは神がもっと大きな何かを持っているからだ』と」

神を知れば、プレッシャーの中でも微笑むことができる

走り高跳びは感情的に過酷な競技であり、非常に正確さが要求され、成功か絶対的な失敗かが即座に評価される。このビデオが信じられないのはそのためだ。2021年の東京オリンピックで2.02メートルをクリアする助走に入る前にオーストラリアのジャンパー、ニコラ・マクダーモットは満面の笑みを浮かべている。

マクダーモットは事前に何かを知っていたのかもしれない。彼女はきれいにバーをクリアし、東京で銀メダルを獲得した。8月4日、結婚して今はニコラ・オリスラガーズとして知られるようになった彼女は、パリで2.00メートルを跳び、再び銀メダルを獲得した。

あるいは、27歳のオリスラガーズが微笑むのは、何があっても神を賛美することを知っているからかもしれない。彼女がインスタグラムで述べたように、「私の岩である神をたたえよ! 彼は私の力であり、歌です!」

マクダーモットは自身のウェブサイトでこう説明している。「私がジャンプして生きている満足感は、かつては人生に意味をもたらすためのパフォーマンス主導のものでした。しかし、私がイエスに出会った時、すべてが変わったのです」

信仰をオープンにすることに加えて、マクダーモットはエバーラスティング・クラウンズというミニストリーを結成した。彼女はその目的を、「仲間のアスリートたちがイエスの完全な愛によって変えられ、教会に植えられ、派遣された先々で祝福となるように弟子入りするのを見ること」と語っている。「私たちの願いは、彼らが信仰を持つだけでなく、永遠の視点を持って競技に臨むようになることです」

小さな国、大きな心、スピーディーな足

あまり知られていないカリブ海諸国にとっては、素晴らしいオリンピックとなった。後述するセントビンセント・グレナディーン代表のシャフィカ・マロニーの活躍に加え、8月3日にはドミニカ代表のテア・ラフォンドが女子三段跳びで優勝し、セントルシア代表のジュリアン・アルフレッドが100メートルで土砂降りの雨の中、米国のスター選手シャカリ・リチャードソンを抑え、「世界最速女子」の称号を手に入れた。

これは、ドミニカとセントルシアにとって、あらゆる色のオリンピック初のメダルである。アルフレッドは6日、200メートルで銀メダルを獲得した。アルフレッドは、自身のインスタグラムのページでローマ人への手紙8章18節「今この時の苦しみは、将来私たちに現されるはずの栄光と比べれば、取るに足りません」を引用している。

2回目のジャンプで勝利の距離を達成したラフォンドは、天候を神の贈り物と表現した。「雨は私にとって好都合だった。2回目のジャンプが終わるとすぐに雨が降ってきた。神様、一緒に働いてくれてありがとう」

陸上の栄光のためにホームレス生活を乗り越えた

「私は神の子です」とシャフィカ・マロニーのインスタグラムの経歴には書かれている。しかし、この神の子は2023年という最近、オリンピックに出場するためにホームレス生活と闘った。

今年2月、大学時代はアーカンソー大学に所属し、カリブ海の国セントビンセント&グレナディーン代表でもあるこの800メートル走者は、前年に数カ月間ホームレス生活をしていたことを明かした。マロニーの告白は同国の首相の目に留まり、その後すぐにカリブ海の水会社から推薦契約を受けた。

マロニーは種目別ランキング27位でパリに到着したが、最初の2ラウンドを自己最高タイムで通過して決勝に進み、8月5日に銅メダルにわずか0.24秒及ばず4位となった。

「食べるものも何もなく、ホームレス状態だった」。スポーツライターのクリス・シャベツは、彼女が決勝への出場資格を得た後、マロニーが言ったことを引用している。「神様はそのすべてを通して私を運んできてくれた。私がここに来た時、神様は、私を置き去りにするためにこんな遠くまで連れてきてくださったのではない、まっすぐに私を運ぼうとしているのだと信じなければならなかった」

飛び込みのメダリスト、「神の働きに任せました」と語る

イギリス人ダイバーのアンドレア・スペンドリーニ=シリエックスは、7月31日に行われた10メートル台シンクロナイズド・ダイビングでパートナーのロイス・トゥールソンとともに銅メダルを獲得した後、自身のインスタグラムで「私は神に栄光を帰します」と語り、ヨシュア記1章9節「強く、雄々しくあれと、私はあなたに命じたではないか。うろたえてはならない。おののいてはならない。あなたがどこに行っても、あなたの神、主があなたと共にいるからだ」を引用した。「これは単なるスポーツではありません。私は国を代表し、家族を代表し、イエスの御名を称えることを誇りに思います」

東京オリンピックで苦戦し、アメリカの体操選手シモーヌ・バイルズが直面したようなメンタルブロックを経験した後、イギリスのテレビタレント、フレッド・シリエックスの娘であるスペンドリーニ=シリエックスは、スポーツをやめることを考えた。その代わりに彼女はキリスト教信仰から力を取り戻した。彼女はそれを躊躇なくシェアした。

彼女は自分の信仰を「安定させる力」と表現し、毎日を祈りで始め、聖書の勉強で終わらせていると語った。競技をする時に何か妄信するものはあるかと聞かれ、「いいえ。私はそれらから離れ、神様が働くようにさせます。競技の前に祈り、聖書の勉強をします」と応じた。

キリストのもとでは、勝者も敗者も勝利者になれる

7月28日、柔道女子52キロ級でブラジルのラリッサ・ピメンタとイタリアのオデット・ジュフリダが銅メダルをかけて対戦した時、2人はすでにお互いをよく知っていた。ジュフリダはブラジルを訪れた際、ピメンタの影響でクリスチャンになったのだ。

試合はピメンタが勝った。喜びと感動の瞬間、彼女が最初に受けた抱擁は、自分が負かした友人からのものだった。彼女はインタビューでこう説明した。「彼女は私にとって特別な人。そして彼女が言ったことは、信じられないほど意味深いものでした。彼女はポルトガル語を話せるので、私たちはよく話をします。オデットは私を通して神を知りました―彼女はブラジルに来て神を見つけたのです。そしてつい数日前、私たちは……すべての誉れと栄光を神に捧げる方法を話していた。だからその瞬間……彼女は私に、すべての誉れと栄光を神に捧げるべきだから、立ち上がるように言ったのよ……それは、私にとって本当に意味のあることでした」

典型的なスケートボーダーではないが、彼は神を愛している

「イエスは王だ!」19歳のスケートボーダーでファンに人気のコーダノ・ラッセルは8月5日、男子ストリートスケートボード決勝でオリンピックのアナウンサーが彼を紹介した時、こう叫んだ。

世界ランキング16位のラッセルは、サンディエゴ(アメリカ、カリフォルニア州)に住みながら母国カナダの選手として出場し、最大のトリックを決めたが、2度転倒して7位に終わった。彼はインスタグラムで「天の父」に感謝の意を表し、2028年のロサンゼルス・オリンピックに向けてトレーニングを続けることを誓った。

身長180センチ、体重104キロのラッセルは、平均的なスケートボーダーよりもはるかに背が高く、筋肉質だ(そして、小柄なライバルたちよりも多くのボードを壊している)。4歳でスケートボードを始めたラッセルは、8歳の時に家族を説得してスケートボードの激戦区であるカリフォルニア州カールスバッドに引っ越した。ラッセルは高校のフットボールでポテンシャルを表したが、プロのスケートボーディングを代わりに選んだ。

「どうするか決めるのに、たくさんの祈り、たくさんの識別が必要だった」とラッセルは今秋入学予定のサンディエゴ大学の出版物で語った。「主が示してくださった理由は、私の愛と心はスケートボードにあるということだった」

その記事によると、ラッセルは「彼の宗教的な教育が、プロのスケートボード選手という厳しい世界で活躍するために必要な労働倫理と精神的な強さを植え付けたと信じている」。彼は若いアスリートを指導しており、彼がトリックをミスした時には、汚い言葉の代わりに「チキンナゲット!(笑)」と叫ぶ期待ができる。

フィジー 偉大なラグビー選手、神のための偉大な歌手

人口100万人に満たない太平洋の島国フィジーは、総面積がハワイの3分の2ほどだが、パリ五輪に33人の選手を擁し、そのうち24人がラグビー選手だ。フィジーのオリンピックでのメダルは、7人制ラグビーのみ。7人制ラグビーが導入された2016年のリオでは金メダル、2021年の東京でも金メダルと、男子チームはオリンピックで無敗を誇っていた。しかし、17連勝の後、今年の金メダル決定戦で開催国のフランスに敗れた。

しかし、その敗戦がフィジー・チームが有名になったもう一つのことから彼らを止めることはなかった。それは神への賛美を歌うことだ。フィジーチームは、オリンピック村の中庭で賛美歌を美しいハーモニーで歌い、世界的な注目を集めた。オーストラリアの水球選手ティリー・カーンズは、「オセアニアの建物の隣という、選手村で最高の席で」というコメントとともに動画を投稿した。

クラシック音楽のウェブサイトがその動画をシェアし、チームがフィジーの賛美歌「モ・ラヴィ・ヴェイ・ジス」を歌っていると説明した。直訳すると、「主に信頼を置けば、主があなたの道を導いてくださる」という意味だ。ウェブサイトはさらに加える。「ビデオを聴くと、プロの合唱団によるリハーサルを耳にしているように思うかもしれない。彼らのハーモニー、リズム、音楽性、そして響きのある声の全き美しさは、正式な訓練を受けた音楽家たちでないとは信じがたい」

手話で福音を伝える

13歳で東京オリンピックのストリートスケートボードで銀メダルを獲得したブラジル人のレイサ・レアルは、今年は銅メダルを獲得した。予選の滑走前、彼女はカメラに向かって手話でヨハネによる福音書14章6節を伝えた。「私は道であり、真理であり、命である」

「私はどの試合でもそれをやるので、同様にやりました」。レアルはブラジルのメディア「UOL」に語った。「私にとって、それは重要なことです。私はクリスチャンで、神を本当に信じています。そこで私は力を求め、すべての人に、神は本当に道であり、真理であり命であるとメッセージを送りました」

南アフリカで最も偉大なオリンピック・スイマーが神を称える

タチアナ・シェーンメーカー・スミスは、200メートル平泳ぎで4個目のオリンピックメダルとなる銀メダルを獲得した後、8月1日に競泳選手からの引退を発表した。彼女はその3日前に100メートル平泳ぎで優勝していた。その後、スミスは「私のコミュニティ」に感謝するTシャツを着た。最初に挙げられた三つの名前は、「神」「イエス」「聖霊」だった。

オリンピックに先立ち、スミスはソーシャルメディアへの投稿で、「神の栄光のために泳ぐこと、そして国を代表して泳ぐことにとてもエキサイトしている」と述べていた。

ブラジルのカイオ・ボンフィム(33歳)は、8月1日に行われた男子20キロ競歩で銀メダルを獲得した後、「私はイエスのものです」と宣言した。3歳の時、まったく歩くことができなかった人物にとっては、相当な快挙である。ボンフィムは幼児期に髄膜炎と肺炎を患った後、乳糖不耐症になった。手術のためにギブスをはめた両足は、成長するにつれ、両親の後を追って競歩の道に進む決意を固めた。

コメディアンやコメンテーターの ユーモアの源でもある競歩のトレーニングは、ブラジリアの街角でボンフィムを嘲笑の的にしたが、彼は粘り強く取り組み、2012年に初めてオリンピック出場権を獲得し、2016年のリオでは4位に入賞した。

レース後のインタビューで、メダルを獲得するのは難しかったかと聞かれたボンフィムは、「いや、難しかったのは初めて通りを歩いて侮辱された日です」と答えた。競技中の経験については、「レース中盤、周囲を見渡すと、1人、2人、3人、5人と選手がいて、『自分はまだ10位なんだ』と気づきました。でも、神の手が私を抱いて『がんばれ!』と言っているのを感じたのです」

ボンフィムはブラジリア近郊の街、ソブラディーニョにあるアッセンブリーズ・オブ・ゴッド教会に通っている。

今も世界トップクラスのスイマー、今は神のために

100メートル平泳ぎの世界記録保持者であるアダム・ピーティ(英国)は、アルコール依存症とうつ病に苦しんだ後、2022年にクリスチャンとなった。彼は惜しくも0.02秒差で金メダルを逃し2位に終わった。彼はその後涙したが、失望はしてはいなかった。

胸に十字架のタトゥーを入れたピーティは、「これは幸せの涙です。2位になったから泣いているのではなく、ここまで来るのにとても苦労したから泣いているのです。私はとても信心深い人間で、神様に私の心を示してくださいとお願いしました。これが私の心です。これ以上ない最高の出来でした」と語った。

ピーティは、彼が今所属している教会を初めて訪れた時、たまたま説教がオリンピックについて触れていたという。「私が教会にやってくるとは誰も知らなかった」。彼は思い起こす。「私はただ後方にいただけ。そう『もし教会を訪れることが私のために神から示されたことでないなら、これは何なんだろう? 自分の意思で来たのではない。神のご意志以外ありえない』」

(翻訳協力=中山信之)

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