アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。
創世記4章2節(参考箇所同書4章1〜24節)
アベルは牧畜生活を代表し、カインは農耕生活を営む者として書かれています。やがてカインは土の実りを、アベルも肥えた羊の初子を神に献げるため持って来たと創世記にあります(3〜4節)。しかし神はアベルの献げ物をよしとされますが、カインには目も止められませんでした。カインは怒ってアベルを殺すという事件にまで発展することになりました(8節)。人類史上初めての殺人事件となるのです。
この物語には事の善し悪しの判断は人間にはなく、神にあるのだという意味が隠されています。カインもアベルも自分の判断で最もよいと思うものを献げ物として持って来たにちがいありません。けれども究極の判断は神がされるのです。神はアベルの献げる物をよしとされました。カインがこれをよしとせずアベルを殺すのは、己の判断が正しいとする自己の絶対化に他なりません。
戦争も含め人と人の争いは、常にここから始まります。人間の判断は、相対化されねばなりません。わたしが正しいと思われるときでも、究極的に正しいか正しくないかの判断はわたしの側にないとする生き方は、相手の立場をも包み込むことができるのであり、赦(ゆる)しを人と人との間に置くことができます。