入学式、卒業式をはじめ、青山学院大学で折々にささげられた実際の祈りを収録した『大学の祈り』(日本キリスト教団出版局)が思わぬかたちで注目を浴びている。青学といえば、毎年、箱根駅伝で目覚ましい活躍を見せる原晋監督率いる駅伝チームで有名だが、その強さの秘訣は実はキリスト教の祈りにあったといえるのかもしれない。二つのキャンパスで行われる壮行会や、最後の全体ミーティング、終了後の報告会(祝勝会)でも、宗教主任による聖書朗読と祈りは欠かせないという。しかし、それらの祈りでは、決して「必勝祈願」はしない。「安全に大会が運営されること、選手たちが力を精一杯発揮すること」、そして「他大学の選手のためにも」祈る。
本書には他にも、さまざまなシチュエーションに合わせた祈りが網羅されており、「実用的すぎる」とネットで話題になった。
青学で実際に祈られた祈りを集めた新刊『大学の祈り』が実用的すぎる件。#失恋した時の祈り #パソコンの調子が悪い時の祈り #病のために職場を離れる時の祈り #青学 #箱根駅伝 #原監督 #日本キリスト教団出版局 #祈り pic.twitter.com/yjefRL5FA2
— 松谷信司「キリスト新聞」編集長(プロテスタント2世)ENFP-A (@macchan1109) February 26, 2022
例えば、「失恋」した時の祈りはこう。
神さま、失恋しました。傷ついています。
大切な人を、時間を、思いを失いました。つらくて、苦しくて立ち上がれません。
どうしてこんなことになったのだろうとあの人を、自分を責め続けています。
神さま、どうぞ助けてください。傷を癒やしてください。
あの人を恨むのではなく、幸せに生きていけますようにと祈らせてください。
そして、どうぞ私に再び人を愛する力を与えてください。
新しい良い出会いを与えてください。
立ち上がり、前に進む力を与えてください。
なんて純粋で、切実な祈り。さらに、「パソコンの調子が悪い」時の祈りは――
神さま、パソコンというものはなぜ、大切な時にかぎって、動かなくなるのでしょうか。
私の大切なデータが無事に保存されていますように。
もし保存されていなかったなら、滞りなく復旧させてくださいますように。
私がこの機械に怒りをぶつけることなく、平静な心を保つことができますように。
あるある過ぎてつい「アーメン!」と唱和してしまいそう。まさに、かゆいところに手が届く祈り。
就職活動における不採用通知が、文末に「今後のご健闘をお祈りいたします」といった文章が添えられることから、「お祈りメール」などと呼ばれているが、こちらには正真正銘の「就職活動の途上で」祈る「お祈り」まで収録。
神さま、創造主であるあなたは、私以上にこの私のことをよくご存じです。
あなたは私の長所も短所もすべて知っておられます。
私はあなたにすべてをお委ねします。
私が進むべき道を示してください。
示された暁には、そこにじっくりと腰を据え
仕事に勤しみ励むことができますように。
そして示されたその場所で、
あなたの栄光をほめたたえることができますように。
そして、今こそ一緒に声を合わせたい「平和の祈り」も。
戦争によって親しい家族を奪われ、友を失った人々の傍らにあなたが共にいてください。
そして、私たちが憎しみの連鎖ではなく、互いにかけがえのない命を尊重し合えますように。
「試験の前に」「ペットが死んだ」「うつに苦しむ」「死にたい」「病のために職場を離れる」などは、信者でなくても困ったときの大きな励ましになりそうだ。気になる方はぜひ手に取ってみてほしい。日ごろ、ささげる祈りの指針になると同時に、教会が大事にしてきた祈りの本質を、鮮やかに照らし出す本になっている。
【1,320円(本体1,200円+税)】
【日本キリスト教団出版局】978-4818411029